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雷神社(雷神宮)

(いかづち じんじゃ らいじんぐう)

雷神社は、福岡県糸島市に位置する神社で、雷山(標高955m)の中腹に鎮座しています。この神社は「雷神宮」とも呼ばれ、古くから地域の信仰の中心として親しまれてきました。旧社格は県社であり、長い歴史と伝統を持つ神社です。

ご祭神と祭日

雷神社では、水火雷電神(瓊々杵尊)、高祖大神(彦火火出見尊)、香椎大神(息長足姫尊)、住吉三神、八幡神の五柱の神々が祀られています。これらの神々は、雷山の守護神として、地域の人々から厚く信仰されています。毎年9月16日に行われる祭日は、多くの参拝者が訪れ、賑わいを見せます。

境内神社と上宮

雷神社の境内には天満宮があり、ここには菅原道真公をはじめ、事解男尊、大己貴命、大山祇神、迦具土神が合祀されています。また、雷山の頂上付近には上宮があり、中殿には瓊々杵尊、左殿には天神七代、右殿には地神五代が祀られています。これらの神々は雷山の霊威を守る存在とされ、古くから信仰の対象となってきました。

雷神社の歴史

女人禁制と神面祈祷

雷神社は古来、女人の参拝を許さない「女人禁制」の神域として知られていました。また、旱(かん、日照り)の年には、古くから「神面祈祷」と呼ばれる雨乞いの祈祷が行われていたと伝えられています。これは、神に捧げる特別な儀式であり、地域の農作物の豊穣を願う重要な行事でした。

歴史上の出来事

暦応5年(1342年)5月、九州探題一色範氏からの雨乞い祈祷の催促文が届き、足利尊氏の庶子、足利直冬も参詣して雨乞いの祈願を行いました。その後、見事に降雨があったことから、直冬は歌に斜文を添えて奉納しました。奉納された歌は以下の通りです。

「世の末といかで思はん雷のまたあらたなる天が下哉」 佐兵衛佐源朝臣直冬

この歌は、雷山の霊威を称えるとともに、神の恵みを感謝する気持ちを表しています。

幕府の祈願所としての雷神社

雷神社は幕府の祈願所としても重要な役割を果たしていました。神領も広く、領主からの寄進や文書も多く残されています。戦国時代には神領の多くが押領されましたが、天正15年(1587年)、筑前領主となった小早川隆景が六石を寄進し、その後、黒田忠之、黒田継高からの寄進により、神領は二十六石に回復しました。

雷山の自然と見どころ

千年杉と大木群

雷神社の境内には、天然記念物に指定されている千年杉や樟の大木があります。これらの樹木は、神社の長い歴史を見守ってきた神聖な存在です。特に千年杉は、樹齢1000年以上とされ、その圧倒的な存在感と美しさで訪れる人々を魅了します。

雷山千如寺と大悲王院

雷山の麓には、天平14年(742年)に開山されたと伝わる千如寺があります。その中でも大悲王院は、宝暦2年(1752年)に黒田継高公によって建立された建物で、鎌倉時代作の国指定重要文化財「木造千手観音立像(もくぞうせんじゅかんのんりつぞう)」や「木造清賀上人坐像」、福岡県指定文化財の「木造多聞天像」、「木造持国天像」など、貴重な文化財が数多く安置されています。

丈六の千手観音像

大悲王院の本尊である「木造千手観音立像」は、高さがほぼ一丈六尺(約4.8m)もあることから、「丈六の千手観音像」とも呼ばれています。この像は鎌倉時代後期(約700年前)の作とされ、通常の千手観音像が48手を表現するのに対し、この像は実際に千の手を持つ特異な形式を持っています。その威容と美しさは訪れる人々の心を打ち、多くの信仰を集めています。

四季折々の風景

境内には、樹齢約400年の大カエデもあり、秋には真っ赤に染まる美しい紅葉が楽しめます。新緑の季節も美しく、訪れる人々に四季折々の自然の美しさを提供しています。特に紅葉の見ごろを迎える11月には、多くの参拝者や観光客が訪れ、神社とその周辺は一層の賑わいを見せます。

雷山の頂上と上宮

大悲王院から少し登ったところに雷神社の上宮があり、ここには県指定天然記念物である樹齢900年のイチョウや、250年のモミの木、400年以上のイロハカエデ、そして樹齢1000年を超える県指定天然記念物の観音杉などが茂っています。11月初旬から11月中旬にかけて、これらの木々が紅葉し、神聖な空間が美しい紅葉に包まれます。

雷山の特徴と伝説

雷山の概要

雷山(標高954.5m)は、福岡県糸島市と佐賀県佐賀市との境に位置し、脊振山系に属しています。雷山は、同山系北部の分水嶺を形成し、山頂は福岡県側にあります。山頂からは、北方に広がる福岡市街や玄界灘の美しい景色を一望することができ、晴れた日には遠くの島々まで見渡すことができます。

雷山の別名と伝説

雷山は、古くは「層々岐岳(そそぎだけ)」という別名で知られていました。これは、山頂付近に広がる草原「層々岐野(そそぎの)」に由来し、この地には神功皇后にまつわる伝説が伝えられています。『万葉集』にも、雷山に関連する句が残されており、「可牟の嶺(かむのみね)」は「神の嶺」とされ、雷山に比定する説もあります。

雷山の自然と特徴

雷山の北側斜面は急崖を成し、険しい地形が特徴です。花崗岩質の脊振山地の中では珍しく、蛇紋岩や緑簾石英角閃石片岩などの変成岩が分布しており、独特の地質を持っています。古生層の表層は、風化が進み、剥き出しの岩肌が見られる場所もあります。標高800m以上の雷山上部には、ヤマツツジやコバノミツバツツジが自生し、春にはこれらの花々が山を彩ります。

Information

名称
雷神社(雷神宮)
(いかづち じんじゃ らいじんぐう)

糸島

福岡県