高祖山は、福岡県福岡市と糸島市の境に位置する標高416mの山で、古代には怡土城（いとじょう）、中世には高祖城（たかすじょう）として重要な役割を果たしていました。この山は、歴史的な背景を持つだけでなく、登山や自然観察のスポットとしても人気があります。
山名の由来
「高祖山」という名称の由来ははっきりしていません。古い文献には「高祖」や「高祖の峰」、「高祖山」などの表記が見られます。山の西麓には高祖神社があり、この神社が山の名前の由来とも考えられますが、逆に山の名前が先にあり、その後に神社が名づけられたという説もあり、定かではありません。
別名「臥牛山」
また、地元では高祖山は「臥牛山（がぎゅうざん）」とも呼ばれています。その理由は、山の形が牛が長々と寝そべっているように見えるためで、特に志登神社からの眺めはその姿をよく捉えています。この姿は糸島市内の広い範囲から望むことができます。
高祖山は、古代から中世にかけて重要な歴史的役割を果たした場所です。8世紀には怡土城が築かれ、戦国時代には原田氏の本拠地である高祖城が存在しました。この山は、様々な時代の歴史を物語る遺跡を抱えています。
怡土城は、西斜面一帯に天平勝宝8歳6月（756年）から神護景雲2年2月（768年）までの約12年間をかけて、吉備真備（きびのまきび）によって築かれました。その後、途中から佐伯今毛人（さえきのいまえみし）に引き継がれ、完成に至りました。この城は、当時の防衛拠点として重要な役割を果たしていました。
怡土城が廃城になった時期は不明ですが、その遺構を利用して建長元年（1249年）、原田種継（はらだたねつぐ）・種頼（たねより）父子が高祖城を築きました。山頂には「上ノ城（本丸）」と「下ノ城（二ノ丸）」があり、山腹には原田氏の信仰が厚かった高祖神社と原田家の菩提寺である金龍寺（きんりゅうじ）があります。
その後、高祖城は少弐氏（しょうにし）に奪われることもありましたが、最終的には大内氏（おおうちし）の支援を受けた原田氏が奪還しました。しかし、天正15年（1588年）、豊臣秀吉の九州征伐により、城主であった原田信種（はらだのぶたね）は所領を没収され、城は廃城となりました。
高祖山は、歴史だけでなく、その自然や登山の魅力でも知られています。山頂からは脊振山（せふりさん）や金山（かなやま）を望むことができ、様々なルートから登山を楽しむことができます。登山道はよく整備されており、初心者から経験者まで楽しめる山です。
高祖山にはいくつかの登山ルートがあり、それぞれに魅力があります。代表的な登山ルートは、今宿野外活動センターを拠点にするルートです。ここからは南の高地山（こうちやま）や東の叶岳（かのうだけ）へと繋がるミニ縦走が楽しめます。
また、高来寺（こうらいじ）や如意（にょい）、高祖神社の裏手からも登山道があり、これらのルートからは山の自然を満喫しながら登山を楽しむことができます。遊歩道は1〜2時間ほどで山頂に到達でき、気軽に登山を楽しむことができます。
高祖山の山頂は木々に覆われており、眺望はそれほど良くありませんが、途中の尾根からは素晴らしい景色を楽しむことができます。東側には博多湾（はかたわん）や福岡市街地が見え、西側には可也山（かやさん）や浮嶽（うきだけ）、羽金山（はがねやま）、雷山（いかづちやま）などの脊振山系の山々が望めます。
高祖山周辺には、登山以外にも見どころがたくさんあります。歴史的な遺構や自然の美しさを楽しめるスポットを訪れてみてはいかがでしょうか。
高祖山の西麓に位置する高祖神社は、古くからこの地域の信仰の中心として親しまれています。神社の歴史や伝統に触れるとともに、美しい自然に囲まれた静かな雰囲気を楽しむことができます。
高祖城主であった原田氏の菩提寺である金龍寺は、山の中腹に位置し、歴史的な建造物や庭園を楽しむことができます。歴史的な遺構と自然が調和した美しい寺院です。
怡土城跡は、高祖山の西斜面一帯に広がり、8世紀に築かれた防衛拠点の名残を感じることができます。散策をしながら、かつての城の規模や構造を想像してみるのも興味深いでしょう。
高祖山は、歴史と自然の魅力を併せ持つ、福岡市と糸島市の境に位置する山です。怡土城跡や高祖城跡など、古代から中世にかけての歴史的な遺構が点在し、登山道も整備されているため、歴史散策や登山を楽しむことができます。ぜひ一度、豊かな自然と深い歴史に触れるために訪れてみてはいかがでしょうか。