雷山は、福岡県糸島市と佐賀県佐賀市の境に位置する山で、標高は954.5メートルです。脊振山系の北部に属し、その分水嶺を形成しています。山頂は福岡県側にあり、そこからは福岡市街や玄界灘を一望できる絶景が広がります。雷山は、その雄大な自然景観と神秘的な伝説で、地元の人々に古くから親しまれてきました。
雷山の頂上の下には、広大な草原「層々岐野(そそぎの)」が広がっています。この地には、神功皇后にまつわる伝説が伝えられており、歴史的な背景を持つ場所としても知られています。この野原の名にちなみ、雷山は「層々岐岳(そそぎだけ)」という別名でも呼ばれています。頂上には雷神社の上宮があり、石祠が三つ鎮座しています。
雷山は、花崗岩が主な地質である脊振山地の中でも珍しく、蛇紋岩や緑簾石英角閃石片岩などの変成岩が分布しています。この独特の地質が、雷山の美しい景観を形成し、多くの自然愛好者を惹きつけています。また、北側の斜面は急崖となっており、険しい地形が訪れる人々に大自然の厳しさと美しさを感じさせます。
古くから、雷山は雷神が鎮座する霊山として崇められてきました。そのため、「雷山」という名前も、この霊的な背景に由来しています。『万葉集』には、「対馬の嶺は 下雲あらなふ 可牟の嶺に たなびく雲を 見つつ偲はも」という句があり、この「可牟の嶺(かむのみね)」は「神の嶺」として雷山に比定される説があります。地元では「雷山に雲がかかると雨になる」という言い伝えもあり、雷山は古くから地域の気象を占う重要な山とされてきました。
雷山には、いくつかの観光名所があり、多くの観光客が訪れます。特に人気なのは、雷山千如寺大悲王院(雷山観音)や、雷山神籠石、そして不動滝(清賀の滝)などです。これらのスポットは、自然の美しさと歴史的な趣を楽しむことができる場所であり、多くの観光客が訪れる理由の一つです。
雷神社(いかづちじんじゃ)は、福岡県糸島市にある神社で、雷山の標高955メートルの中腹に位置しています。この神社は雷山の名前の由来ともなっており、古くから雷神宮(らいじんぐう)とも呼ばれてきました。旧社格は県社であり、重要な信仰の地として人々に親しまれています。
雷神社には、水火雷電神(瓊々杵尊)、高祖大神(彦火火出見尊)、香椎大神(息長足姫尊)、住吉三神、八幡神の五神が祀られています。これらの神々は、雷山の神聖な霊気を守護しているとされ、毎年9月16日に行われる祭日には、多くの参拝者が訪れます。また、境内には天満宮があり、菅原道真の他、事解男尊、大己貴命、大山祇神、迦具土神が合祀されています。
神社の上宮は、雷山の頂上付近に鎮座しており、瓊々杵尊(中殿)、天神七代(左殿)、地神五代(右殿)を祀っています。この上宮は、古来より女人の参拝を許さなかったことで知られています。旱(ひでり)の年には、古くから神面祈祷が行われ、雷山の神々に祈りを捧げることで雨乞いを行ってきました。暦応5年(1342年)には、九州探題一色範氏が雨乞い祈祷を催促した記録が残っており、また、足利直冬が参詣し、雨乞い祈願を行った後、見事に降雨があったとされています。
雷神社は、幕府の祈願所としても知られ、神領も広大でした。戦国時代には、神領の多くが押領されましたが、天正15年(1587年)に筑前領主となった小早川隆景が六石を寄進し、その後も黒田忠之、黒田継高による寄進で二十六石にまで回復しました。これにより、雷神社は再び地域の信仰の中心としての役割を果たすことができるようになりました。
境内には、天然記念物である「千年杉」や「樟の大木」があり、その壮大な姿は訪れる人々を魅了します。これらの木々は、雷山の歴史を見守り続けてきた生き証人であり、神聖な雰囲気を醸し出しています。
雷山へのアクセスは、JR筑前前原駅から雷山観音前行のバスで約30分です。バスを降りた後は、山頂まで徒歩で約4キロメートルの道のりが続きます。自然豊かな山道を楽しみながら、雷山の頂上を目指して登るのも一興です。また、車で訪れる場合は、山道が急なため十分な注意が必要です。