正覚寺は、福岡県福岡市城南区に位置する臨済宗東福寺派の由緒ある寺院です。山号は清賀山と称し、本尊には聖観音菩薩が祀られています。また、宗教法人名としては油山観音という名で知られています。この寺院は、深い歴史と文化を持ち、地域の信仰と結びついています。
伝承によれば、正覚寺は天平年間(729年~749年)に、西域(現在の中央アジア)から訪れた僧、清賀上人によって創建されたとされています。清賀上人は白椿の木を用いて千手観音像を彫刻し、一庵を結んだことが寺の始まりとされています。また、彼が椿の実から油を搾る燈油製法を伝えたことが、「油山」および「油山観音」という名称の由来とされています。寺の初めの頃は「泉福寺」と称していました。
正覚寺はその後、勅命により720坊、七堂伽藍を備え、寺領は付近一帯の12万石余りに達するという大いなる興隆を迎えたと伝えられています。しかし、戦国時代の天正年間(1573年~1592年)に龍造寺隆信の兵火により、すべてが焼失してしまいました。元禄期に至り、観音堂、客殿、鐘楼堂、庫裏などの諸堂宇が再建され、寺名も元禄7年(1694年)に「正覚寺」と改められました。
正覚寺の本堂には、山岳信仰の対象である木造聖観音坐像が安置されています。この像は1906年(明治39年)に旧国宝、現在の重要文化財として指定されました。しかし、2009年(平成21年)10月4日にこの貴重な像が盗難に遭うという事件が発生しました。福岡県内の重要文化財が盗まれたのはこれが初めてのことでしたが、幸運にも3か月後の12月に発見されました。犯人は複数で、本堂の南京錠を切断して盗み出したと推定されています。
正覚寺の境内には、1994年(平成6年)に建立された「ひばり観音堂」があります。この観音堂は、昭和を代表する歌手、美空ひばりを祀るために建てられたものです。美空ひばりのファンや彼女の音楽を愛する人々にとって、ここは特別な場所となっています。
正覚寺では、毎年2月1日に「油山粥開き」が行われます。これは小正月から15日間、本堂に放置された小豆粥の状態により、その年の気象や作柄を占う伝統的な行事です。地域の人々にとって、この行事は古くから続く大切な風習となっています。
正覚寺には、国指定の重要文化財があり、木造聖観音坐像がその代表的なものです。この像は像高約78cmで、漆箔が施されており、南北朝時代の作と推定されています。その繊細な彫刻と保存状態の良さから、歴史的にも文化的にも非常に価値の高いものとなっています。
油山(あぶらやま)は、福岡市の城南区、早良区、南区にまたがる山です。標高は597mで、名前は天平時代に清賀上人が正覚寺で椿油を精製したことに由来します。聖武天皇の時代に、インドから渡ってきた清賀上人が、油山観音正覚寺で日本で初めて椿の実から椿油を作ったことだと言われています。
正覚寺へのアクセスは以下の通りです:
地下鉄七隈線の福大前駅で下車し、そこから徒歩約30分の距離にあります。また、西鉄バスを利用する場合は、油山団地口バス停で下車し、徒歩約20分です。
自動車を利用する場合、福岡市天神から約30分で到着し、寺院には無料の駐車場も用意されています。車での訪問も便利です。
以上が、福岡市城南区にある正覚寺についての詳細な情報です。この寺院は、歴史的な背景や文化財、さらに年中行事など、訪れる価値のある場所です。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。