福岡市中央卸売市場は、福岡県福岡市が開設し、管理運営を行う中央卸売市場です。市場は、鮮魚市場、食肉市場、新青果市場の三つの市場で構成されており、福岡市の流通の中枢を担っています。
福岡市中央卸売市場は、1938年(昭和13年)に最初の市営青果市場が業務を開始したことから、その歴史が始まりました。しかし、戦時体制下での統制経済により一時は解散しましたが、1950年(昭和25年)に大都市計画の一環として再設置の計画が推進されました。1955年(昭和30年)には農林大臣から正式な認可を受け、福岡市中央卸売市場が開場しました。これ以降、鮮魚部や青果部、食肉市場が次々に設置され、市場は大きく発展していきました。
2016年には、それまで分かれていた3つの青果市場が移転し、新青果市場(愛称:「ベジフルスタジアム」)に統合されました。これにより、鮮魚市場、食肉市場を併せた3場で市場運営が行われるようになり、効率的な流通が可能となりました。
1990年代から2000年代にかけては、鮮魚市場や食肉市場の再整備が進められました。1991年(平成3年)には第5次中央卸売市場整備計画の中で鮮魚市場の再整備が採択され、1995年(平成7年)には第1期工事が開始されました。また、1996年(平成8年)には第6次中央卸売市場整備計画の中で食肉市場の移転新設が採択され、1998年(平成10年)に新食肉市場の建設が始まりました。
青果市場、東部市場、西部市場の旧市場跡地の広大な敷地については、福岡市のまちづくりに寄与するための土地利用が模索されてきました。福岡市では、これらの土地を売却し、新市場用地の財源とすることを目指しましたが、土地価格だけでなく、提案内容も評価の対象とする総合評価プロポーザル方式による公募が行われました。
特に、博多区那珂の旧青果市場については、8ヘクタールを超す広大な敷地を有しており、福岡空港や博多駅にも近接していることから、福岡市の魅力あるまちづくりに寄与する跡地利用が期待されました。2015年には地元住民の意見を取りまとめる「青果市場跡地まちづくり協議会」が設立され、2017年には「青果市場跡地まちづくり構想」が策定されました。
2018年に事業者の公募が行われ、4事業体が応募しました。その中で、三井不動産株式会社を代表とするグループが選ばれ、「出会いの広場〜そして次の景色へ〜」を基本方針とする開発計画が進められることになりました。この計画には、九州初の職業体験施設「キッザニア」や、福岡・九州の食材集積ゾーンである「福岡フードマーケット」などが含まれ、地域の魅力を高めることが期待されています。
福岡市中央卸売市場に関連する施設として、博多港、福岡市場駅、福岡県花卉農業協同組合、柳橋連合市場などがあります。これらの施設は市場と密接に連携し、福岡市の食文化や流通を支えています。また、旧東部市場跡地には「ブランチ(BRANCH) 福岡下原」という複合施設が開業し、地域の新たな商業拠点として機能しています。
旧西部市場跡地には、社会医療法人財団白十字会が新しい医療施設「白十字病院」を開設し、地域医療の充実に貢献しています。これにより、旧市場跡地の有効利用が図られ、地域の発展が促進されています。
福岡市中央卸売市場は、福岡市の食文化や流通を支える重要な役割を果たし続けています。今後も市場の再整備や跡地の有効活用が進められ、地域経済の発展に寄与していくことが期待されます。