篠栗九大の森は、福岡県糟屋郡篠栗町和田に位置する美しい森であり、九州大学農学部附属演習林の一つ、福岡演習林の一角にあります。総面積約513ヘクタールの広大な演習林の中で、一般に無料開放されている約17ヘクタールの林地を「篠栗九大の森」と呼びます。敷地の西端にある蒲田池を中心に広がるこの森は、福岡都市圏における憩いの場として、多くの人々に親しまれています。
篠栗九大の森は、2010年(平成22年)7月18日に一般開放が始まりました。この森は、篠栗町と九州大学が共同で管理しており、スダジイやアラカシ、クスノキなどの多様な樹木が生育しています。中央には農業用ため池「蒲田池」があり、その周囲には遊歩道が整備されています。遊歩道の長さは約2キロメートルで、ウッドチップが敷かれており、自然を楽しみながら30分ほどで一周することができます。
篠栗九大の森には、約50種の常緑広葉樹、約40種の落葉広葉樹が自生しており、上層にはスダジイやアラカシ、タブノキ、クスノキ、ヤマモモなどが茂り、下層にはアオキやヒサカキが生い茂っています。さらに、この森にはラクウショウも植えられており、湿地における樹木の生態研究が行われています。また、スズメバチやマムシ、イノシシなどの日本でよく見られる危険生物も生息しているため、注意が必要です。
篠栗九大の森は、近年SNSの普及により「インスタ映え」スポットとして一躍有名となりました。特に、蒲田池に植えられたラクウショウが水面からそびえ立つ光景は「絵画を見ているようだ」「ジブリの世界観」と評され、多くの訪問者を引き寄せています。2017年(平成29年)11月には、紅葉の見ごろを迎えたこともあり、来訪者数が3万人に達しました。この急激な人気上昇により、周辺道路の渋滞や立入禁止区域への侵入などの課題も浮上しており、篠栗町と九大は対応に苦慮しています。
遊歩道は蒲田池を一周する約2キロメートルのコースで、路面はウッドチップが敷かれており、周囲の自然を楽しみながら散策することができます。道中には「くりのき広場」や「さくら広場」など、さまざまな広場や休憩所が点在し、森林浴を楽しむことができます。また、東屋(四阿)からは若杉山や米ノ山を遠望できる絶好のビュースポットもあります。
篠栗九大の森は、あくまで近隣住民の散策や健康増進を目的として開放されており、観光地としての整備は行われていません。そのため、訪問者は自然を尊重し、マナーを守って楽しむことが求められています。また、敷地内には立入禁止区域が設定されており、スズメバチやマムシなどの危険生物が生息しているため、注意が必要です。蒲田池での魚釣りなども禁止されており、注意喚起の掲示板が設置されています。
最寄り駅はJR九州篠栗線の門松駅で、約2キロメートル離れています。また、篠栗駅からは篠栗町による福祉巡回バス「オアシス篠栗巡回バス」を利用することもできます。このバスは無料で利用でき、「和田健康広場前」で下車すれば篠栗九大の森にアクセスできますが、運行本数が限られており、毎週月曜日は運休しています。自家用車の場合、九州自動車道福岡インターチェンジから約2.4キロメートルの距離にあります。駐車場は北口と南口に設置されていますが、いずれも大型バスの利用はできず、開園時間外は施錠されます。
篠栗九大の森は、季節に応じて開園時間が異なります。4月から9月までは午前6時から午後5時まで、10月から3月までは午前7時から午後5時まで開園しています。訪問者は開園時間内に訪れ、自然の中でゆったりとした時間を楽しむことができます。
篠栗九大の森は、福岡都市圏にありながら豊かな自然を感じることができる貴重なスポットです。特に、SNSで話題となったラクウショウの風景は一見の価値があります。訪問者は自然を尊重し、マナーを守りながら、美しい自然の中でリフレッシュする時間を過ごすことができるでしょう。また、篠栗町と九大が共同で管理しているこの森は、地域住民の健康増進にも貢献しており、今後も多くの人々に愛され続ける場所であることが期待されます。