鷲尾愛宕神社は、福岡県福岡市西区愛宕山(旧名: 鷲尾山)に位置する神社で、地元では単に「愛宕神社」とも呼ばれています。旧社格は郷社であり、現在は神社本庁の別表神社に指定されています。
鷲尾愛宕神社は、伊耶那岐尊・天忍穂耳尊を祀る鷲尾神社(鷲尾権現)と、火産霊神・伊耶那美尊を祀る愛宕神社(愛宕権現)が明治時代に合併したもので、現在の形態に至っています。この神社は百道浜地区にも近く、景色が美しいことから、百道浜を望む多くの写真がこの愛宕神社付近から撮影されています。
鷲尾愛宕神社は、『網走番外地 悪への挑戦』や『ノン子36歳(家事手伝い)』、『はなちゃんのみそ汁』など、数々の映画のロケ地としても知られています。その美しい景観と静かな雰囲気が、多くの映画製作者に愛されてきました。
鷲尾愛宕神社の創始は、西暦72年、景行天皇2年にまで遡ります。当時、鷲尾山に伊耶那岐尊・天忍穂耳尊を祀ったことが鷲尾神社(鷲尾権現)の始まりとされています。この神社は、後に英彦山権現と同一視されるようになり、地域の守護神として信仰を集めました。
鎌倉時代に元寇が発生した際、幕府は博多に鎮西探題を設置し、玄界灘を見渡せる鷲尾山に城砦(鷲尾城)が築かれました。南北朝時代には、度重なる戦火に見舞われ、鷲尾神社も衰退しましたが、江戸時代に入ると福岡藩主・黒田忠之が愛宕権現を勧請し、神社の再興が図られました。
明治34年(1901年)、鷲尾神社と愛宕神社は合併され、鷲尾愛宕神社となりました。以後、村社から郷社へと昇格し、戦後には神社本庁の別表神社に指定されました。現在でも火徳の神として、また願掛けの神として広く信仰され、正月三ヶ日には70万人もの参拝者が訪れる、福岡県内有数の神社となっています。
1928年、愛宕索道が設立され、全国で2番目、九州初のロープウェイが建設されました。これにより、麓の明治通りから愛宕山山頂までを結ぶロープウェイが営業され、多くの参拝者や観光客が訪れる人気のスポットとなりました。しかし、第二次世界大戦中の1943年には、戦時供出のために廃止され、今ではその名残を感じるパネルが神社近くに設置されています。
鷲尾愛宕神社は、春になると約2千本の桜が咲き誇る桜の名所としても知られています。毎年桜の季節には、境内外が花見客で賑わい、華やかな春の風景を楽しむことができます。この季節には多くの家族連れや観光客が訪れ、美しい桜を楽しんでいます。
鷲尾愛宕神社へは、福岡市地下鉄空港線の室見駅から徒歩12分(約980m)でアクセスできます。また、天神地区からは西鉄バス301・302・333系統に乗車し、「愛宕神社入口」バス停で下車後、徒歩10分(約860m)で到着します。
車でのアクセスも容易で、福岡高速環状線の愛宕出入口から約1kmの距離にあります。駐車場も完備されているため、車で訪れる方も便利に参拝することができます。
鷲尾愛宕神社は、その長い歴史と美しい自然環境により、地元住民だけでなく、多くの観光客にも愛される神社です。特に、春の桜の季節には、その魅力が一層際立ち、多くの人々が訪れる名所となっています。歴史に触れながら、四季折々の自然を楽しむために、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。