北九州市門司区港町に位置する旧大阪商船は、歴史的な価値を持つ建造物であり、国の登録有形文化財にも登録されています。大正六年(1917年)に建てられたこの建物は、かつて大阪商船の門司支店として使われており、その後、商船三井ビルとしても使用されました。現在では観光名所として多くの人々に親しまれています。
旧大阪商船は、大正期の代表的な建築物として、1917年に大阪商船の門司支店として建設されました。大阪商船は日清戦争後、朝鮮や台湾、大連などへ航路を拡大し、この建物は門司港からの国際航路の一大拠点となりました。1964年(昭和39年)に大阪商船と三井船舶が合併し、商船三井ビルとして使用されましたが、1991年に北九州市が建物を取得し、現在は文化遺産として保存されています。
旧大阪商船は、木造二階建て(一部レンガ型枠コンクリート造)で、ドイツやオーストリアで開花した「ゼツェシオン様式」の影響を受けたデザインが特徴です。外観には、化粧レンガと白い石の装飾が調和し、華やかで重厚な印象を与えます。特に目を引くのは、建物の角に位置する八角形の塔屋です。この塔屋はかつて門司港のランドマークとして、街と港の象徴的存在でありました。
大正時代、大阪商船の門司支店は、門司港から台湾、中国、インド、ヨーロッパへ向かう客船の拠点として機能していました。当時、建物の北側は海に面しており、専用桟橋から直接乗船が可能でした。1階は待合室や税関の事務所として、2階はオフィスとして使用され、多くの人々がここから外国へ旅立っていきました。
1991年に北九州市がこの建物を取得した後、建物は修復され、1999年には国の登録有形文化財に指定されました。また、2007年には近代化産業遺産にも認定され、歴史的価値が認められています。現在は観光地として多くの人々に親しまれ、1階には「わたせせいぞうギャラリー」や「門司港デザインハウス」、カフェ「カフェ・マチエール」があります。
1階に位置する「わたせせいぞうギャラリー」では、北九州市出身の漫画家・わたせせいぞう氏の作品を展示しています。わたせせいぞう氏は、色鮮やかなイラストレーションで知られており、ギャラリーでは彼の代表作や門司港を舞台にした作品を楽しむことができます。ギャラリーは有料ですが、大人100円、小中学生50円とリーズナブルな料金設定で、多くの観光客に親しまれています。
門司港デザインハウスは、地元の作家やデザイナーの作品を展示・販売しているスペースです。ここでは、門司港にちなんだオリジナルの雑貨やアクセサリーを購入することができ、門司港観光の記念品として人気があります。観光客はもちろん、地元の人々にも愛される場所です。
カフェ・マチエールは、旧大阪商船の1階にあるおしゃれなカフェです。歴史的な建物の雰囲気を楽しみながら、焼きバナナのハニートーストなどの人気メニューを味わうことができます。観光で疲れた体を休めるのにぴったりの場所で、テラス席からは門司港の美しい景色を眺めることもできます。
旧大阪商船は、夜になると美しいライトアップが施され、幻想的な雰囲気に包まれます。毎年行われる「門司港レトロ・ナイトファンタジー」では、旧大阪商船を含む門司港の歴史的建造物がライトアップされ、港全体が一層ロマンティックな空間となります。このイベントは、観光客にとっても地元の人々にとっても、大変人気があります。
旧大阪商船は、門司港駅から徒歩約5分とアクセスが良好です。門司港駅はJR鹿児島本線の終点駅で、博多駅からは快速で約1時間程度で到着します。周辺には、門司港レトロ地区の観光スポットが集まっており、散策しながら歴史的建造物を巡ることができます。
旧大阪商船を訪れる際には、1階の「わたせせいぞうギャラリー」や「門司港デザインハウス」、そしてカフェ「カフェ・マチエール」を楽しむことをお勧めします。さらに、門司港レトロ地区全体を散策しながら、旧門司税関や旧門司三井倶楽部などの歴史的建造物も訪れてみてください。また、夜のライトアップは一見の価値があり、カップルやファミリーでの訪問にも最適です。
旧大阪商船の開館時間は9:00から17:00までで、年中無休です。ただし、わたせせいぞうギャラリーは年2回の休館日があるため、訪問前に確認することをお勧めします。入場は基本的に無料ですが、わたせせいぞうギャラリーは有料で、大人100円、小中学生50円の料金がかかります。30人以上の団体での訪問の場合は、20%の割引が適用されます。
住所: 福岡県北九州市門司区港町7-18
電話番号: 093-321-4151
駐車場: なし(近隣の駐車場を利用)
営業時間: 9:00 - 17:00
休館日: 年中無休(わたせせいぞうギャラリーは年2回休み)
料金: 無料(わたせせいぞうギャラリーのみ有料)
旧大阪商船は、かつて門司港の国際航路の拠点として重要な役割を果たしていた建物であり、現在では観光名所として多くの人々に親しまれています。歴史的な価値を持つ建築物の魅力を堪能しながら、わたせせいぞうギャラリーや門司港デザインハウス、カフェ・マチエールでのんびりと過ごすひとときは、訪れる人々にとって特別な体験となるでしょう。ぜひ、門司港レトロ地区を訪れた際には、旧大阪商船にも足を運んでみてください。