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河内貯水池

(かわちちょすいち)

河内貯水池は、福岡県北九州市八幡東区に位置し、二級河川・板櫃川の本流上流部に建設された河内ダムによって形成された人造湖です。湖周辺では、春には桜、夏には新緑、秋には紅葉と、四季折々の美しい景色が楽しめます。特に、北九州国定公園に指定されており、自然の美しさと歴史が調和した場所として、多くの観光客に親しまれています。

南河内橋と重要文化財指定

河内貯水池に架かる「南河内橋」は、日本で唯一現存するレンティキュラー・トラス(レンズ型トラス)構造の鋼橋です。この橋は1926年に完成し、建築様式や技術が高く評価され、2006年12月に国の重要文化財(建造物)に指定されました。現在、この橋は歩行者と自転車専用となっており、湖畔の景色を楽しみながらゆったりと散策できます。

ます渕サイクリングロード

湖畔には「ます渕サイクリングロード」が整備されており、天気の良い日は自転車で巡るのもおすすめです。サイクリングロードは、南河内橋をはじめとする複数の橋を経由し、小倉南区の鱒渕地区まで延びています。また、河内サイクリングセンターでは貸自転車のサービスも提供されており、湖周辺を手軽に楽しむことができます。

河内桜公園と河内藤園

貯水池の堰堤付近には「河内桜公園」が広がり、春には美しい桜が咲き誇ります。ソメイヨシノが約180本植えられており、3月末から4月上旬にかけて見ごろを迎えます。さらに、周辺には「河内藤園」という全国的にも有名な藤の名所があり、散策や自然の美しさを楽しむことができます。秋には紅葉も楽しめ、11月中旬から12月上旬が見ごろです。

歴史的背景と建設の経緯

河内貯水池は、1919年に八幡製鉄所の鉄鋼増産態勢に対応するため、工業用水を確保する目的で建設が開始されました。土木課長の沼田尚徳が中心となり、1927年に完成。堰堤の高さは43.1メートル、幅は189メートルで、当時は東洋一の規模を誇るダムでした。建設には延べ90万人の労働者が動員されましたが、一人の殉職者も出さなかったという歴史的な記録も残っています。

ダムの技術とSDGsへの貢献

河内貯水池の堰堤は、通常のコンクリートむき出しのダムとは異なり、自然の石を活用して造られています。ダム建設時に出てきた石を再利用し、石造りの堤が積み上げられ、耐久性を高める機能も持たせています。この技術は、自然環境との調和を大切にしたものであり、北九州市のエコの原点としてSDGsの取り組みにもつながっています。

南河内橋の技術と美しさ

レンティキュラー・トラス構造で建設された「南河内橋」は、日本で唯一の存在です。八幡製鉄所の自社鋼材を使用して自社設計で建てられたこの橋は、自然と調和した優美なデザインを持ちながら、頑強な構造を持つ橋梁です。現在は歩行者と自転車専用となり、その歴史的な価値と美しさを多くの人々が訪れています。

沼田尚徳と「妻恋の碑」

河内貯水池の設計を手掛けた沼田尚徳は、建設期間中に多くの家族を亡くすという悲しい出来事に見舞われました。次女、父、3人の娘、3人の息子、そして最愛の妻・泰子夫人も猩紅熱で亡くしてしまいます。沼田は完成後、妻への感謝と哀悼の想いを込め、「妻恋の碑」を白山宮の参道に隣接した土地に建立しました。この碑は、彼の妻に対する深い愛情と感謝の象徴となっています。

河内貯水池の未来とエコ活動

河内貯水池は、近代化産業遺産としての価値だけでなく、北九州市のエコ活動やSDGsの取り組みを学べる場所でもあります。自然と調和したダム建設の理念は、100年後を見据えた未来の憩いの場所作りを目指しており、現在も北九州の工業用水供給や観光資源として重要な役割を果たしています。

アクセス情報

電車でのアクセス: JR九州鹿児島本線「スペースワールド駅」から、イオンモール八幡東より西鉄バス北九州「上重田」行きに乗車、終点より徒歩9分(約750m)。

車でのアクセス: 北九州高速道路4号線「大谷出入口」から、福岡県道62号北九州小竹線などを経由し、約5.6㎞。

Information

名称
河内貯水池
(かわちちょすいち)

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