旦過市場は、福岡県北九州市小倉北区魚町に位置する市場で、北九州の台所として知られています。多くの食料品店や飲食店が立ち並び、地元住民だけでなく観光客も多く訪れる場所です。
旦過市場は、神嶽川(かんたけがわ)の東側に位置し、小文字通りを挟んで魚町銀天街に接続しています。市場はアーケードで覆われ、北側の入口にはかつて日本初の24時間営業スーパーマーケット「丸和」がありましたが、2019年3月1日からは「ゆめマート」に変更されました。市場には200以上の店舗が並び、鮮魚や青果、精肉、惣菜など多様な商品が扱われています。また、郷土料理の「じんだ煮」や鯨肉を提供する専門店もあります。
旦過市場は、福岡市の柳橋連合市場と並んで福岡県を代表する市場の一つであり、一般消費者だけでなく、料亭や料理店のプロの料理人も訪れます。また、グルメ番組や旅番組でしばしば紹介され、観光名所としても人気を集めています。
市場の川側とは反対側に位置する「新旦過横丁」には、おしゃれな飲食店が立ち並び、特に週末の夜には若者で賑わっています。旦過市場が長く親しまれている伝統的な空間である一方、新旦過横丁は若い世代をターゲットにした新しいスタイルの飲食街として注目されています。
旦過市場の「旦過」という名前は、修行僧が宿泊する場所を指す言葉に由来しています。市場の近くには、小倉藩主であった小笠原家ゆかりの寺院「宗玄寺」や「開善寺」があり、これらと町屋敷を結ぶ橋が架けられていました。この橋は、城下町の南玄関である香春口へと通じていました。
市場は、大正時代初期に神嶽川の魚の荷揚げ場として始まり、その後、田川や中津方面からの野菜の集積地として機能し始めました。昭和30年代には市場に木造の建物が多く建てられ、密集した様子が現在の市場の姿となっています。市場は1960年代を舞台にした映画『初恋』(2006年公開)のロケ地としても使用されました。
旦過市場は、2009年7月24日に発生した中国・九州北部豪雨によって浸水被害を受けました。72時間の雨量が450mmを超え、神嶽川の紫川合流点から逆流した水が市場を浸水させました。翌年の2010年7月14日にも梅雨前線による大雨で再び浸水被害が発生し、2年連続での被害となりました。
また、1999年6月の豪雨や1953年6月の北九州大水害も大きな影響を与えています。紫川の河川改修が進められた結果、2018年の大雨では水位が抑えられ、浸水は発生しませんでした。
1999年9月14日、旦過市場では丸和が火元となる火災が発生し、市場の川側の約1/3が焼失しました。また、2022年には2度の火災が発生しました。4月19日には新旦過横丁付近で火災が発生し、42軒が延焼、8月10日には再び大規模な火災が発生し、45店舗が焼損しました。火元の飲食店では天ぷら油を過熱したまま放置したことが原因とされ、2024年3月には元経営者が業務上失火罪で起訴されました。
旦過市場は建物の老朽化や火災などに対応するため、北九州市役所が市場の再整備計画を進めています。2021年2月には「旦過地区土地区画整理事業」が決定され、4階建てのビルを新たに建設する予定です。ビルの1・2階には約60店舗が収容され、2027年度の完成を目指しています。また、再整備中も営業を続けるため、店舗は仮区画に移転しながら営業を継続するローリング方式が採用されています。
2022年の火災で被害を受けた新旦過横丁は、この再整備計画には含まれておらず、再建は別途行われています。2023年3月には仮設市場「旦過青空市場」が完成し、21店舗が入居を予定しており、4月には10店舗が営業を開始しました。
旦過市場へのアクセスは非常に便利です。北九州モノレール小倉線の旦過駅から徒歩ですぐの場所に位置しており、また、西鉄バス北九州の「旦過橋クエスト」バス停から徒歩約2分、「紺屋町」バス停からもすぐです。車で訪れる場合も、北九州高速1号線の勝山出入口もしくは大手町出入口から1.2kmとアクセスが良好です。