甘木歴史資料館は、福岡県朝倉市に位置する県立の博物館で、地域の歴史や文化を伝える貴重な施設です。設立当初から、地元の歴史や考古学的資料を展示し、多くの来館者に愛されてきました。
朝倉郡にはかつて、歴史に関する専門的な展示施設はほとんど存在していませんでした。唯一、朝倉市立三奈木小学校に併設されていた三奈木歴史館がありましたが、1996年に閉館しています。しかし、1970年代に始まった大分自動車道の建設に伴う発掘調査により、この地域には多くの遺跡が存在することが明らかになりました。
これにより、発掘された遺物の管理や活用、さらにかつて秋月城の城下町や甘木宿として栄えた甘木の歴史を展示する施設が求められるようになりました。地元からの強い要望を受け、1979年(昭和54年)に福岡県教育委員会内で資料館の設置が決定し、1985年(昭和60年)5月25日に「福岡県立甘木・朝倉歴史民俗資料館」として開館しました。
それ以来、福岡県教育委員会の運営のもと、特別展の開催や特別展図録を兼ねた資料館だより『温故』の発行など、様々な活動を行ってきました。
甘木歴史資料館は、鉄筋コンクリート製の2階建ての建物で、その外観は伝統的な土蔵を意識したデザインとなっており、いぶし銀瓦やナマコ壁・白壁が特徴です。館内には、常設展示室が2つあり、それぞれが地域の歴史と文化を紹介しています。
この展示室では、近世から近代にかけて盛んであった櫨蝋(はぜろう)や養蚕業、甘木絞りに関する資料を中心に展示されています。これらは地域の産業として重要な役割を果たしてきたものであり、当時の生活や文化を知る手がかりとなります。
また、農業や生活、祭祀に関わる民俗資料も豊富に展示されており、福岡藩の藩医であり、世界で初めて種痘を実施した緒方春朔に関する資料も紹介されています。これらの展示は、地域の歴史と人々の暮らしの変遷を詳しく知ることができる貴重なものです。
この展示室では、弥生時代後期から古墳時代前期にかけての大集落である平塚川添遺跡から出土した遺物や、朝倉市立秋月中学校から発見された朝鮮鐘など、朝倉郡内で出土した考古学的遺物が展示されています。これらの展示を通じて、古代の朝倉郡の歴史を考古学の視点から学ぶことができます。
館外にも見どころがあり、国境石や支石墓、水車などが移設展示されています。これらは、歴史的な文化財としての価値があり、実物を見ることで当時の生活や風景を感じることができます。
また、1階のロビーや2階のホールでは、地域の美術作品や工芸品の展示も行われており、来館者に多彩な文化体験を提供しています。
甘木歴史資料館は、地域の歴史と文化を広く伝えるため、無料で公開されています。開館時間や休館日については以下の通りですので、訪問の際は事前に確認しておくと良いでしょう。
9:30~16:30
月曜日(月曜が祝日の場合は翌日)、12月28日~1月4日
無料
甘木歴史資料館へのアクセスは、公共交通機関または車での移動が便利です。最寄りの交通機関は、西鉄甘木線および甘木鉄道甘木線の甘木駅で、駅からは徒歩15分ほどの距離にあります。また、車でお越しの場合は、大分自動車道甘木インターチェンジから約5分で到着します。
甘木歴史資料館は、地域の歴史や文化を深く学べる貴重な場所です。豊富な展示内容や美しい建築、屋外展示など、多くの見どころがあるため、訪れる価値のある施設と言えるでしょう。福岡県朝倉市を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。