筑前町立大刀洗平和記念館は、福岡県朝倉郡筑前町に位置する歴史資料館であり、第二次世界大戦中の資料を展示しています。館内には、旧日本陸軍の九七式戦闘機や旧日本海軍の零式艦上戦闘機など、約1,800点におよぶ貴重な展示物が収蔵されています。
大刀洗陸軍飛行場があった筑前町には、かつて陸軍の大刀洗陸軍飛行学校が存在しましたが、長らくその歴史を伝える施設はありませんでした。一方、分校があった鹿児島県の知覧町(現・南九州市)には、知覧特攻平和会館が設立されており、地域の戦争遺産が伝えられていました。
1987年(昭和62年)、当時の甘木鉄道太刀洗駅の旧駅舎が無人駅化のため取り壊される予定だったところ、地元の建設業者であった渕上宗重氏の尽力により、駅舎を利用して個人運営の記念館として開館しました。これが現在の筑前町立大刀洗平和記念館の前身です。
記念館の運営は個人によるものでしたが、1996年(平成8年)には、博多湾から引き上げられた九七式戦闘機が展示されるなど、展示物の充実が図られました。その後、三輪町と夜須町の合併に伴う合併特例債を主な財源として、国道500号線を挟んだ高田地区に新しい記念館が建設されました。そして、2008年(平成20年)に旧館は閉館し、翌年の2009年(平成21年)10月3日に町立博物館として新たに筑前町立大刀洗平和記念館が開館しました。
新館は、飛行機の格納庫を模したカマボコ型の外観が特徴です。新しい記念館の開館に伴い、福岡航空宇宙協会から寄贈された旧海軍の零式艦上戦闘機三二型が展示されることになりました。九七式戦闘機および零戦三二型は、現存する唯一の実機であり、貴重な展示物です。
また、屋外にはMH2000も保存展示されており、2022年(令和4年)には映画「ゴジラ-1.0」の撮影のために製作された震電の実物大模型が新たに加わり、同年7月6日より展示が開始されました。
記念館では、1945年(昭和20年)3月に起きた太刀洗大空襲に関する資料や、空襲で命を落とした犠牲者の遺影が展示されています。遺影コーナーには、撃墜されたB-29爆撃機の搭乗員の遺影も含まれており、戦争の悲惨さとその歴史を伝えています。
さらに、館内の天井にはB-29爆撃機の実物大スケールで作られた飛行機型の骨組みがあり、訪問者がその巨大さを容易に想像できるようになっています。
館内の写真撮影に関しては、零戦三二型、九七式戦闘機、震電レプリカのみ許可されています。それ以外の展示物については写真撮影は禁止されているため、訪問の際には注意が必要です。
展示内容は多岐にわたります。まず、飛行場の歴史や航空技術に関する展示があり、戦時中の航空技術の進歩と飛行場の役割について学ぶことができます。また、大刀洗飛行場と地域住民の生活に関する展示では、戦時中の地域住民と飛行場の関わりや、戦争がもたらした生活の変化について紹介されています。
太刀洗大空襲の記録や、特攻隊に関する展示も充実しており、特攻隊の歴史やその背景、犠牲となった若者たちの思いが伝わる展示となっています。さらに、追憶の部屋では、戦争の悲劇と平和の尊さについて深く考えさせられる内容が展開されています。
館内には企画展示コーナーや図書閲覧コーナーも設けられており、さまざまな角度から戦争と平和について学ぶことができます。企画展示コーナーでは、時期に応じた特別展示が行われており、訪れるたびに新しい発見があります。
筑前町立大刀洗平和記念館の前身となる旧館は、1987年(昭和62年)に朝倉郡の建設業者、渕上宗重氏が個人運営で開館しました。当初は小規模な展示館でしたが、1996年(平成8年)には九七式戦闘機の展示が開始され、次第にその規模を拡大していきました。
その後、町立博物館としての役割を果たすため、新しい館が建設されることになり、2008年(平成20年)12月に旧館は閉館しました。現在、旧館は「太刀洗レトロステーション」として利用されています。
2009年(平成21年)10月3日に新館が開館し、展示内容がさらに充実しました。2017年(平成29年)4月5日には、特攻隊に関する新しい展示室と多目的室が設置され、来館者がより深く学び、感じ取ることができる環境が整備されました。
筑前町立大刀洗平和記念館は、甘木鉄道甘木線の太刀洗駅から徒歩ですぐの場所に位置しています。公共交通機関を利用してのアクセスが便利で、電車を降りてからすぐに訪れることができます。
車でのアクセスも容易で、大分自動車道甘木インターチェンジからは約3km、筑後小郡インターチェンジからは約4.5kmの距離にあります。駐車場も完備されているため、車での来館も安心です。
筑前町立大刀洗平和記念館は、戦争の悲劇と平和の大切さを後世に伝える重要な施設です。展示されている実物の戦闘機や、太刀洗大空襲の記録を通じて、訪れる人々に深い感動と学びを提供しています。歴史に触れ、平和の尊さを再認識する場として、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。