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海軍築城航空基地 稲童掩体

(かいぐん ついき こうくうきち いなどうえんたい)

海軍築城航空基地 稲童掩体は、福岡県行橋市に位置する太平洋戦争時の重要な遺跡で、当時の「掩体壕(えんたいごう)」の一つです。もともと「稲童1号掩体壕」として知られていましたが、現在は福岡県の指定史跡として、「海軍築城航空基地 稲童掩体」と正式に改称されています。この掩体壕は戦争の記憶を今に伝える貴重な建造物として保存されており、当時の歴史的な背景を物語っています。

掩体壕とは何か

「掩体(えんたい)」は、戦時中に敵の攻撃から兵器や航空機などを守るために造られた防御施設の一種です。特に、航空機などの装備を空爆から守るために覆い状に造られた施設が「掩体壕(えんたいごう)」です。戦時中、多くの航空基地ではこのような掩体壕が建設され、自軍の航空機を敵の空襲から守るために使用されました。掩体壕は敵の攻撃を避け、航空機を格納して破壊を防ぐための重要な施設として機能しました。

築城航空基地の建設

福岡県の築城航空基地は、1939年(昭和14年)に大日本帝国海軍が建設を開始し、1943年(昭和18年)に完成しました。この基地は、当時の日本海軍の第五五三海軍航空隊の主要な拠点であり、戦時中の重要な航空拠点として機能しました。現在は、航空自衛隊の築城基地として使用されており、その歴史的な背景と共に現代の日本の防衛体制の一部となっています。

掩体壕の建造と現存状況

1944年(昭和19年)に戦局が悪化し、アメリカ軍が日本本土へ接近する中で、築城航空基地では基地に配備された航空機を敵の攻撃から守るために、急ピッチで掩体壕の建造が進められました。当時、この地域には大小合わせて約30基もの掩体壕が存在していましたが、現在はそのほとんどが失われています。

しかし、今なお現存する稲童1号掩体壕は、その中でも特に重要な遺構で、戦争の記憶を今に伝える貴重な史跡です。この掩体壕は、入り口の幅26.8メートル、高さ5.5メートル、奥行き23.5メートルという大規模なコンクリート製の構造物で、特徴的なカマボコ形をしています。戦争当時、この掩体壕が実際にどのように呼ばれていたかは不明ですが、現在では「稲童1号掩体壕」として知られています。

史跡としての指定と保存活動

稲童1号掩体壕は、2002年(平成14年)に行橋市の史跡に指定されましたが、その後、2023年(令和5年)3月28日に福岡県の指定史跡となり、名称も「海軍築城航空基地 稲童掩体」に変更されました。この史跡指定により、地域の歴史的価値が再評価され、保存活動が進められています。

掩体壕は戦時中の遺物として、当時の日本が直面した戦争の現実を後世に伝える貴重な存在です。今では観光資源としても活用され、訪れる人々に戦争の歴史と教訓を学んでもらう場となっています。

築城航空基地と稲童掩体の歴史的背景

戦争と築城航空基地の重要性

築城航空基地は、第二次世界大戦中に日本海軍の重要な航空拠点として機能しました。日本国内での防空体制の強化が求められる中、1940年代初頭に築城航空基地の建設が進められました。当初は訓練や防衛任務を目的としていましたが、戦況が悪化するにつれて、基地の役割も防衛から実戦へと変化していきました。

掩体壕の役割

戦時中、特に1944年にアメリカ軍による空襲の危機が高まると、日本国内の航空基地では航空機を守るための掩体壕が急速に建造されました。築城航空基地周辺でも、多数の掩体壕が建設され、航空機を格納して敵機からの空爆を回避するために利用されました。稲童掩体もその一環として建造され、多くの航空機がここで守られていたと考えられます。

現代における稲童掩体の価値

戦争遺跡としての重要性

稲童掩体壕は、戦争遺跡としての価値が非常に高く、太平洋戦争中の日本が直面した困難や戦争の現実を後世に伝える役割を担っています。戦時中に使われた具体的な防衛施設が今も残っていることで、訪れる人々は当時の歴史を実感し、平和の重要性を再認識する機会を得ることができます。

観光資源としての稲童掩体

現在、稲童掩体は行橋市や福岡県にとって貴重な観光資源の一つとなっています。歴史を学びたい訪問者だけでなく、地域の文化や遺跡に興味を持つ観光客にとっても魅力的なスポットです。地域住民の保存活動によって、この掩体壕は良好な状態で保たれており、今後もさらなる保存と活用が期待されています。

稲童掩体のアクセス情報

稲童掩体へのアクセスは、公共交通機関や自家用車を利用することが可能です。以下はアクセス情報の概要です:

電車でのアクセス

最寄り駅は平成筑豊鉄道の豊津駅です。駅からタクシーで約11分の距離に位置しています。

バスでのアクセス

行橋駅から太陽交通バスの勝山新町線に乗車し、「津積」停留所で下車後、徒歩約26分(2.1km)で到着します。

車でのアクセス

自家用車を利用する場合、東九州自動車道の行橋インターチェンジから約7km、またはみやこ豊津インターチェンジから約8kmの距離にあります。

まとめ

海軍築城航空基地 稲童掩体は、太平洋戦争時代の歴史的な遺構として、現代に貴重な教訓を伝える遺跡です。その保存と活用により、多くの人々が戦争の現実を学び、平和の重要性を再確認する機会を提供しています。歴史に触れながら地域を訪れる観光客にとって、稲童掩体は忘れられないスポットとなることでしょう。

Information

名称
海軍築城航空基地 稲童掩体
(かいぐん ついき こうくうきち いなどうえんたい)

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