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直方隕石

(のおがた いんせき)

直方隕石は、福岡県直方市下境の須賀神社に「飛石」として伝わる隕石です。隕石の落下に関する目撃記録があり、世界最古の隕石として認定されていますが、実際の落下時期には諸説があります。この隕石は天文ファンや歴史愛好家にとっても興味深い対象となっており、神幸大祭の際に公開されるなど、地元の文化財としても大切にされています。

隕石の概要

直方隕石は、重量472gのL6-コンドライトという石質隕石であり、現在も須賀神社が管理しています。この隕石は通常は非公開ですが、5年に一度行われる神幸大祭の際に特別公開されます。直近では2016年10月22日から23日にかけて公開され、多くの天文ファンが訪れました。神社の境内には、1992年に建てられた記念碑があり、隕石のレプリカも設置されています。

隕石の特長とその管理

この隕石は非常に珍しいもので、落下当時の目撃記録が残っているという点でも特筆すべき存在です。須賀神社が管理するこの隕石は、歴史的にも科学的にも価値が高いものであり、公開時には多くの訪問者が足を運びます。

「世界最古の落下目撃隕石」認定の経緯

貞観3年4月7日(ユリウス暦861年5月19日、グレゴリオ暦換算で24日)に、現在の須賀神社(旧武徳神社)の境内に隕石が落下したと伝えられています。この隕石はその翌日に掘り出され、桐箱に納められて保存されたという伝承が地元に残っています。この桐箱の蓋には「貞観三年四月七日ニ納ム」という墨書があり、この記録が当時の出来事を裏付ける証拠となっています。

1922年の鑑定とその後

1922年、大正時代に筑豊鉱山学校の初代校長であった山田邦彦が、この隕石を隕石であると鑑定しました。しかし、学術雑誌での発表は行われず、山田氏の急逝によりこの鑑定結果は長い間知られないままでした。須賀神社には、1924年(大正13年)3月の日付が入った鑑定書の写しが現存しています。

世界最古の隕石として認定されるまで

1979年9月19日、地元のラジオ番組「九州むかし話」で須賀神社の「飛石」伝説が紹介され、これがきっかけで研究者が隕石落下の可能性を調査し始めました。国立科学博物館の理化学研究部長である村山定男らの鑑定により、1981年にこの隕石が世界最古の隕石落下目撃記録として認定されました。

異説:1749年落下説

この隕石の落下時期については、別の説も存在します。2012年9月に『福岡地方史研究』第50号に発表された説によると、直方隕石は貞観年間(861年)ではなく、江戸時代中期の寛延2年5月29日(1749年7月13日)に落下したとされています。この説の根拠として、青柳種信の著書『筑前町村書上帳』に記された「飛石伝記」が引用されています。

「飛石伝記」との関係

『筑前町村書上帳』に記された「飛石伝記」では、大きな音とともに飛来した物体が祇園社(現在の須賀神社)の境内にある木に衝突し、隣家に落ちた後、土の中から黒い石が現れたとされています。この記述は、直方隕石の特徴と一致するため、江戸時代に隕石が落下した可能性が高いとされています。

異説の支持理由

この異説が支持される理由として、いくつかの要素が挙げられます。まず、861年という年代は、国外で最古とされるエンシスハイム隕石(1492年)よりもあまりにも古いこと、また桐箱の墨書の書体や文体が幕末以降のものであることが指摘されています。さらに、同じ神社に二度も隕石が落下するという確率は非常に低いため、1749年落下説が有力視されています。

科学的な年代測定と結論

隕石の落下時期を確定するために、科学的な年代測定も行われました。須賀神社の宮司の許可を得て、桐箱の一部を削り取って放射性炭素年代測定が実施され、その結果、西暦410±350年という年代が得られました。この結果により、直方隕石は科学的にも古い年代のものとされ、世界最古の落下目撃隕石として認められています。

今後の研究課題

しかし、現在でも直方隕石の落下時期には疑問が残っています。桐箱以外に確実な証拠がないため、さらなる研究や調査が必要とされています。今後も、この隕石に関する研究が進むことで、新たな事実が明らかになる可能性があります。

結論

直方隕石は、その落下時期に関する諸説や歴史的背景を持つ非常に興味深い天文現象の一つです。861年に落下したとする説があれば、1749年に落下したとする異説もあります。科学的な測定結果は古い年代を示しているものの、確実な証拠がないため、今後のさらなる研究が期待されます。この隕石は現在も須賀神社に保管されており、特別な機会にしか公開されませんが、その歴史的価値とともに、多くの人々に知られています。

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名称
直方隕石
(のおがた いんせき)

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