九州マクセル赤煉瓦記念館は、福岡県田川郡福智町に位置する産業遺産であり、旧三菱方城炭鉱坑務工作室としての歴史を持つ建物です。この記念館は、炭鉱遺産としての価値を保持しながら、現在も地域の歴史を伝える重要な役割を果たしています。福智町内に現存する数少ない炭鉱関連の遺産の一つとして、見学者に貴重な学びと歴史の体験を提供しています。
九州マクセル赤煉瓦記念館の起源は、1904年(明治37年)にまで遡ります。当時、三菱方城炭鉱の坑務工作室として建設され、地域の炭鉱産業を支える重要な施設でした。1962年(昭和37年)に三菱方城炭鉱が閉山した後、この建物は新たな役割を果たすことになり、1970年(昭和45年)には九州日立マクセル株式会社(現在のマクセル株式会社)の事務所として利用されました。
その後、1997年(平成9年)に国の登録有形文化財に指定され、さらに2007年(平成19年)には経済産業省によって「近代化産業遺産」にも認定されています。現在、記念館は1階に同社製品の展示室、2階には喫茶店が併設され、地域住民や観光客に親しまれています。
九州マクセル赤煉瓦記念館の建物は、当時の炭鉱事務所をモデルにした欧米風のモダンな外観が特徴です。ドイツ人技師の指導の下、床面積約300平方メートルのレンガ造りの2階建て建物として建設されました。特に、通りに面した一部が3階建てに見えるユニークなデザインが印象的です。この建物は、建設当初、炭鉱の扇風機室として使用されていたとされています。
使用された赤煉瓦は炭鉱開発のために特別に焼かれたもので、非常に高い品質を誇ります。このレンガ造りの壁は、1914年の方城炭鉱大爆発や2005年の福岡沖地震にも耐え、堅牢さが証明されています。建物外観を覆うツタが四季折々に異なる表情を見せ、訪れる人々に趣を与えています。
建物内部では、2階の天井が取り払われており、むき出しになった鉄骨構造が目に入ります。これらの鉄骨は、ボルトやナットを使わずにリベットで固定されており、その技術は戦艦大和にも採用されたものと同じです。建築技術の粋を集めたこの構造は、現在も訪れる人々に当時の産業技術の高さを伝えています。
記念館の1階には、マクセル株式会社の製品が展示されています。長い歴史を持つ企業として、時代と共に進化してきた技術や製品の数々を通じて、日本の産業発展を感じることができます。また、2階には喫茶店があり、訪れた人々が休憩しながら歴史的な空間を楽しむことができます。古き良き時代の建物に囲まれたリラックスした時間を過ごすことができ、観光の一環としても人気を博しています。
九州マクセル赤煉瓦記念館は、福岡県内の公共交通機関や自動車を利用してアクセスすることができます。最寄りの駅は平成筑豊鉄道伊田線の金田駅で、駅から記念館までは徒歩約22分(1.8km)です。また、自動車でのアクセスも便利で、九州自動車道鞍手インターチェンジからは16km、東九州自動車道行橋インターチェンジからは19kmの距離にあります。
記念館の周辺には、訪問者用の駐車場が完備されています。車で訪れる際には、事前に駐車スペースの確認をしておくとスムーズに訪問できます。また、週末や祝日には多くの観光客が訪れるため、早めの時間に到着することをおすすめします。
九州マクセル赤煉瓦記念館を訪れた際には、周辺の観光スポットも併せて楽しむことができます。福智町は炭鉱遺産だけでなく、美しい自然や歴史的な建造物が点在しており、豊かな文化に触れることができるエリアです。
記念館の近くには、かつての方城炭鉱跡があります。方城炭鉱は福智町の発展に大きく貢献した炭鉱で、閉山後もその歴史を伝える遺構が残されています。炭鉱の歴史に興味のある方は、記念館と共に訪れると、さらに深い理解が得られるでしょう。
自然を楽しみたい方には、福智山への登山や上野峡の散策もおすすめです。福智山は福岡県の名山の一つで、美しい景色を楽しみながらの登山が魅力です。また、上野峡には白糸の滝や虎尾桜など、見どころが満載です。特に春には桜が咲き誇り、自然美に癒されること間違いありません。
九州マクセル赤煉瓦記念館は、福智町の貴重な産業遺産として保存されているだけでなく、訪れる人々に当時の炭鉱産業や技術の発展を伝える重要な施設です。歴史的な背景や技術的な価値を学びながら、地域の文化や自然にも触れることができる場所として、多くの観光客に愛されています。炭鉱の歴史と近代化の象徴である赤煉瓦の建物は、地域の誇りであり、訪れる人々に深い感動を与えることでしょう。