王塚古墳は、福岡県嘉穂郡桂川町寿命に位置する、前方後円墳の形状を持つ古墳です。この古墳は、国の特別史跡に指定されており、発掘された出土品は国の重要文化財として評価されています。
王塚古墳は、日本で数少ない装飾古墳のひとつであり、石室内の壁画が特徴的です。この壁画は五色で彩られ、独自の美しさを持っています。
1934年9月30日、採土工事中に偶然発見された王塚古墳の石室は、古墳の歴史的価値を明らかにしました。6世紀中ごろに築造されたと考えられており、福岡県が調査を行い、1937年には国の史跡として指定されています。その後、1952年には国の特別史跡に指定され、装飾古墳としても日本初の指定となりました。
また、発掘された出土品は1956年に重要文化財として指定され、京都国立博物館に保管されています。
発見当初は墳丘の一部が削られていたものの、完全に復元された際の王塚古墳は、全長約86メートル、後円部径約56メートル、後円部高約9.5メートル、前方部幅約60メートルと推定されています。墳丘は2段築成で、黒色と赭土色の粘質土を交互に積み上げる手法が取られており、周囲には二重の周濠が巡らされています。
後円部に位置する石室は、横穴式の構造で、内部には後室(玄室)とその手前に前室と羨道が備えられています。玄室内には、遺体を収納する石棺や石棚、灯明台石が配されており、さらに玄室の入り口上部には小窓が設けられています。
石棺は4人分の埋葬スペースがあり、頭部を置くための窪みが2つ、石屋形の外側にも2つの石枕が確認されています。これにより、最大で4人の被葬者が埋葬されていたと推定されています。
王塚古墳の石室は以下の大きさとなっています。
王塚古墳の最も特筆すべき点は、石室のほぼ全面に描かれている美しい壁画です。日本国内の装飾古墳では珍しい五色(赤・黄・緑・青・黒)の色彩が使用され、2005年の調査時点で国内最多の色数を誇ります。
壁画には以下のようなモチーフが描かれています。
これらの図像は、古代の武具や馬具などの象徴として、また幾何学的文様が組み合わされ、歴史的価値と美的価値が融合した独自の装飾性を持っています。
王塚古墳は1937年に国の史跡として指定され、その後1952年には特別史跡に昇格しました。さらに1977年には史跡範囲の追加指定も行われ、保存と研究が続けられています。
出土品としては、変形神獣鏡や玉類、馬具、金銅鞍金具、金銅製の装飾品など多くが含まれており、1956年に重要文化財として指定されています。これらの貴重な出土品は現在、京都国立博物館に保管されています。
王塚古墳へは、JR九州筑豊本線桂川駅から徒歩6分(約480m)で訪れることができます。
車で訪れる際は、九州自動車道福岡インターチェンジから約20km、八木山バイパス筑穂インターチェンジを経由すると便利です。