兵士・庶民の戦争資料館は、福岡県鞍手郡小竹町に位置する私設の戦争資料館です。この資料館は、陸軍兵士として中国などに出征した武富登巳男(たけとみとみお)が、戦争の真実を伝えるために開設したもので、多くの戦争に関連する資料が展示されています。
兵士・庶民の戦争資料館は、1979年(昭和54年)7月1日に、武富登巳男が福岡県飯塚市にあった自宅を改造して展示を開始したことに始まります。その後、1996年(平成8年)に現在の福岡県鞍手郡小竹町御徳に移転し、戦争にまつわる貴重な資料を収蔵・展示する場として知られるようになりました。
館のモットーは「戦争体験者よ、真実を語れ」であり、元兵士や遺族から寄贈された品々を通じて、戦時中の兵士や庶民の生活を伝えています。約3000点にも及ぶコレクションには、兵士が使用した軍事品だけでなく、庶民の日常を反映する資料も多く含まれています。
他の戦争資料館と異なる特徴として、展示物に「どうぞ 触ってください」と掲示されており、来館者が実際に展示物に触れることができます。この方針は、戦争の記憶や感覚を直接体験することで、より深い理解を促すためのものです。展示物に触れることで、来館者は戦時中の現実に近づくことができ、戦争の恐怖や苦しみをより身近に感じることができます。
開設者である武富登巳男の死後、彼の妻・智子が館長を務めていました。智子の死後は、息子である武富慈海(じかい)が館長に就任し、展示の維持・運営を続けています。家族による継承が、資料館の運営を支えています。
兵士・庶民の戦争資料館が収蔵する資料は、戦時中に使われた様々な品々で、特に以下のようなものが含まれています。
これらの資料を通じて、兵士の生活や戦争に巻き込まれた庶民の苦悩、当時の日本社会の状況などが感じ取れる展示が行われています。中でも、毎年10月にはフィリピン・レイテ島で戦死した日本兵の遺品を集めた特別企画展が開催されており、訪れる人々に戦争の悲惨さを伝え続けています。
特に注目される展示の一つが、フィリピン・レイテ島で戦死した日本兵の遺品を集めた企画展です。この展示は、毎年10月に行われ、戦場から戻らなかった兵士たちの遺品を通じて、戦争の悲惨さを目の当たりにすることができます。戦争の記憶を後世に伝えるため、訪れる人々に深い印象を与えています。
著名な作家である大岡昇平が『レイテ戦記』を執筆したことから、2020年に神奈川近代文学館で開催された「大岡昇平の世界展」でも、この資料館の所蔵品が展示されました。展示品には、三八式歩兵銃、鉄帽、軍靴、巻脚絆、水筒、飯盒、認識票、手榴弾などの兵士の装備や、レイテ島からの遺品が含まれており、大岡昇平の作品世界と共に戦争の現実が紹介されました。
兵士・庶民の戦争資料館は、小竹町にあるため、車や公共交通機関を利用して訪れることができます。公共交通機関を利用する場合、最寄り駅からのアクセスや、周辺の観光地と合わせて訪れるのが便利です。
武富家の3代にわたって受け継がれるこの資料館は、戦争の悲惨さを後世に伝えるための重要な役割を担っています。戦争の記憶が風化しつつある現代において、このような資料館の存在は、未来の世代にとって非常に重要です。今後も、兵士や庶民が体験した戦争の真実を伝え続け、平和の尊さを再認識させる場としての役割を果たしていくことでしょう。
兵士・庶民の戦争資料館は、戦争の現実を伝える貴重な場所です。来館者が実際に展示物に触れられる点や、戦時中の庶民の生活を知ることができる資料が豊富である点が特徴的です。過去の戦争の教訓を学び、平和を願うための重要な施設として、多くの人々に訪れてもらいたい場所です。