福岡県筑後市に位置する船小屋温泉は、矢部川沿いに湧き出る冷鉱泉です。温泉街が形成されており、歴史的にも豊かな背景を持つこの温泉は、含鉄炭酸泉を特徴としています。船小屋温泉の周辺には、豊かな自然と観光名所が点在し、多くの観光客に愛されています。
船小屋温泉は筑後市側(右岸)と、対岸のみやま市側(左岸)にまたがって湧出しています。みやま市側の温泉は「新船小屋温泉」と称され、船小屋温泉と新船小屋温泉を隔てる矢部川には、船小屋温泉大橋が架けられており、国道209号が通っています。
船小屋温泉の開湯は1824年(文政7年)にさかのぼります。古くから地域の人々に親しまれ、現在もその豊かな鉱泉を求めて多くの人々が訪れます。2024年には「船小屋鉱泉場」の施設がリニューアルされ、さらに魅力的な温泉地として進化しました。
船小屋温泉は含鉄炭酸泉で、鉄分が多く含まれているため、湧出後に酸化し、赤みを帯びた沈殿物が見られます。この温泉の鉄分は、飲泉することで鉄欠乏性貧血の改善に効果があるとされています。福岡県内には多くの高温の温泉が存在しますが、船小屋温泉の源泉は19℃で、冷鉱泉に分類されます。この低温のおかげで、湧出直後の炭酸成分が湯に溶け込んでいます。
船小屋温泉の炭酸成分は、プレートテクトニクスによって地中に沈み込んだ海底炭酸塩や、マントルから上昇してきた二酸化炭素など、複数の要因から供給されています。また、湧出する水は雨水が地下に浸透したものと考えられており、これらが地下深くでマントル由来の成分と混ざり合い、地上に湧き出しています。さらに、微量なヘリウムが含まれており、これは地球深部から供給されたものと推定されています。
船小屋温泉の鉱泉水には低濃度のメタンも含まれており、その一部は地下に堆積した有機物が微生物によって変換されたものだと考えられています。
船小屋温泉は、矢部川沿いに約10軒の旅館やホテルが立ち並び、温泉街を形成しています。冷鉱泉であるため、加温された浴場が整備されており、旅の疲れを癒すには最適な場所です。また、筑後市側には福岡県営筑後広域公園が広がっており、日帰り入浴ができる共同浴場「恋ぼたる」もこの公園内に位置しています。公共交通機関を利用する場合、筑後船小屋駅から公園内を通ってアクセス可能です。
船小屋温泉には飲泉場も整備されており、温泉の中心的な施設として多くの観光客に利用されています。矢部川を挟んで、筑後市側とみやま市側の両方に飲泉施設が整備されており、筑後市側では無料で、みやま市側の長田鉱泉場では有料で飲泉を楽しむことができます。
船小屋温泉は、国道209号沿いの筑後市とみやま市の行政境界に位置しており、温泉を訪れる際には周辺の観光スポットも楽しむことができます。みやま市側には「中の島公園」が整備されており、自然豊かな風景の中でリラックスした時間を過ごすことができます。
毎年、矢部川のそばで花火大会が開催されており、観光のハイライトとなっています。以前は「船小屋温泉花火大会」として親しまれていましたが、2019年に「ちっご祭」と統合され、「ちっご祭~恋のくに花火大会」として開催されました。2020年と2021年は新型コロナウイルスの影響で中止されましたが、2022年には「ちっご恋のくに花火大会」として再開されました。しかし、2023年には再び中止となりました。
船小屋温泉へのアクセスは公共交通機関も便利です。JR九州の九州新幹線および鹿児島本線「筑後船小屋駅」から約1.2km北東に位置しており、駅からは西鉄バスを利用して「船小屋」停留所で下車します。さらにJR久留米駅やJR羽犬塚駅、西鉄久留米駅からも、西鉄バス50番・53番系統の船小屋行きに乗車し、終点で下車後、徒歩約200mで温泉に到着します。また、JR瀬高駅からはみやま市のコミュニティバス「くすっぴー号」1号車に乗車し、「新船小屋」で下車します。新船小屋地区への公共交通は限られているため、バスの本数には注意が必要です。日祝日には運休する場合もあるため、事前の確認がおすすめです。
車で訪れる場合、九州自動車道の八女インターチェンジから国道209号を南西に進み、約5kmの距離にあります。国道沿いに位置しているため、初めて訪れる方でも分かりやすい立地となっています。
福岡県筑後市の豊かな自然と歴史に抱かれた船小屋温泉。冷鉱泉特有の炭酸泉と鉄分を豊富に含んだ泉質、温泉街の風情、そして多彩な観光施設がそろい、訪れる人々に癒しと活力を与えてくれるでしょう。ぜひこの機会に、船小屋温泉でゆったりとしたひとときをお楽しみください。