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今村天主堂

(いまむら てんしゅどう)

今村天主堂は、福岡県三井郡大刀洗町にあるカトリック教会で、正式にはカトリック今村教会と呼ばれています。1913年(大正2年)に竣工した赤煉瓦造りの天主堂は、設計者である鉄川与助の代表作のひとつであり、国の重要文化財にも指定されています。隠れキリシタンの歴史とともに、この聖堂は今もなお訪れる人々を魅了しています。

名称の由来

天主堂の正式な名称は「カトリック今村教会」であり、カトリック福岡司教区によって現在も使用されています。2017年(平成29年)に国の重要文化財に指定された際には「今村天主堂」として指定されました。これに先立ち、2006年(平成18年)には「今村教会堂」の名称で福岡県の有形文化財に指定されています。

隠れキリシタンの歴史

今村地域には、戦国時代からキリスト教が伝わり、豊臣秀吉による九州平定以降も隠れキリシタンたちが信仰を守り続けた歴史があります。江戸時代の禁教令下でも、今村の信徒たちは密かに信仰を守り、江戸時代初期の殉教者ジョアン又右衛門の墓の上に現在の聖堂の祭壇が設けられています。

幕末とカトリック復興の動き

1867年(慶応3年)、長崎の大浦天主堂でベルナール・プティジャン神父が隠れキリシタンを発見したことをきっかけに、今村地域の信徒たちはカトリック教会に復帰しました。1873年(明治6年)の禁教令解禁まで、今村の信徒は密かに大浦天主堂と連絡を取り合い、信仰を続けました。

初代の教会堂とその発展

1879年(明治12年)、ジャン・マリー・コール神父が今村に司牧に着任し、青木才八家の土蔵をミサに使用していました。その後、1881年(明治14年)には最初の教会堂が建設されましたが、すぐに手狭となり、1887年(明治20年)に増築されました。

現聖堂の建設

今村天主堂の現聖堂は、1896年(明治29年)に着任した第4代主任司祭本田保神父が計画したものです。1908年(明治41年)、江戸時代の殉教者ジョアン又右衛門の墓の上に大祭壇を設置する構想に基づいて新しい聖堂の建築が始まりました。設計は鉄川与助が担当し、1912年(明治45年)に着工、1913年(大正2年)に完成しました。赤煉瓦造りのロマネスク様式で、長崎の旧浦上天主堂を縮小した設計となっています。

聖堂の建築様式

今村天主堂は、ロマネスク様式を基調とした建築で、正面には特徴的な六角形の双塔があります。国内でもレンガ造りの教会堂としては唯一の双塔を持つ貴重な建築です。聖堂内部は三廊式バシリカ型で、木造のキングポストトラスを用いた屋根構造が特徴です。また、内部にはアーケード、トリフォリウム、クリアストーリーから成る三層構成があり、リブ・ヴォールト天井が施されています。これらの要素が調和した、非常に美しい建築です。

鉄川与助と教会建築

設計者である鉄川与助は、九州地方を中心に多くの教会建築を手がけており、今村天主堂は彼が設計した7つ目の教会です。彼の作品は、その堅牢さと美しさから高く評価されており、今村天主堂もその一例です。特に、教会の建設にはドイツからの寄付も大きな役割を果たしました。

鐘とその歴史

今村天主堂の双塔に取り付けられた鐘は、ブラジルに移住した今村出身者からの寄贈によるものでした。この鐘は1914年(大正13年)に長崎司教によって聖別され、長くその美しい音色が親しまれていました。しかし、1945年(昭和20年)の太平洋戦争末期に徴発され、その後は失われてしまいました。

近代赤レンガ建築としての評価

今村天主堂は、赤レンガ建築としても高い評価を受けています。赤煉瓦ネットワークによる「20世紀 日本赤煉瓦建築番付」では、大阪市中央公会堂や江田島旧海軍兵学校生徒館と並び「西の横綱」に選ばれました。また、横浜開港資料館による番付でも、京都の同志社大学や熊本の旧第五高等中学校本館とともに「西の大関」に選出されています。

文化財指定と修復工事

2006年(平成18年)には「今村教会堂」として福岡県の有形文化財に指定され、2015年(平成27年)には「今村天主堂」として国の重要文化財に指定されました。築100年を超え、老朽化が進んだため、2021年から建物内への立ち入りが禁止され、2022年には耐震補強工事が開始されました。今後も保存修復が行われる予定です。

教会の保護者

今村天主堂の保護者は「大天使ミカエル」です。天使の守護のもと、この教会は長い歴史を経て今もなお、信仰の中心として存在しています。

建築概要

設計・施工: 鉄川与助
竣工: 1913年(大正2年)
間口: 14.6メートル
奥行: 37.1メートル
建築様式: 三廊式バシリカ型のロマネスク様式

アクセス方法

Information

名称
今村天主堂
(いまむら てんしゅどう)

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