久留米市美術館は、福岡県久留米市に位置する市立美術館です。2016年(平成28年)11月19日に開館し、地域文化の発展と美術教育の普及を目的とした施設として多くの人々に親しまれています。本館は、かつての「石橋美術館」として知られ、その歴史と役割を引き継ぎ、現在では地元ゆかりの美術作品を展示・収集しています。
久留米市美術館の前身である「石橋美術館」は、株式会社ブリヂストンの創業者である石橋正二郎氏が、郷里である久留米市に寄贈した美術館として1956年(昭和31年)4月26日に開館しました。この美術館は、社会公共の福祉と文化向上のために、石橋氏が収集した「石橋コレクション」を基に設立されました。石橋コレクションには、日本近代洋画や日本と中国の書画、陶磁器などが含まれており、特に青木繁、坂本繁二郎、古賀春江といった久留米出身の画家たちの作品が充実しています。
石橋美術館は、石橋文化センターの中心施設として位置づけられ、地元住民だけでなく全国からの美術愛好者に親しまれてきました。設計は、著名な建築家・菊竹清訓によって行われ、斬新でモダンなデザインは、当時の美術館建築としても注目を集めました。
1977年(昭和52年)には、久留米文化振興会から公益財団法人石橋財団(現在の公益財団法人)が運営を引き継ぎ、さらなる発展を遂げました。1996年(平成8年)には、石橋正二郎氏の長男である幹一郎氏の寄贈によって、東洋美術を展示する「石橋美術館別館」が開館し、久留米市における美術文化の中心としての役割を強化しました。
石橋財団は2014年(平成26年)に運営方針を見直し、東京に新しい施設を建設して美術品を一元管理することを決定しました。その結果、2016年(平成28年)8月28日に石橋美術館は一時閉館し、運営は久留米市へと移管されることになりました。そして、同年11月19日、「久留米市美術館」として新たに開館し、久留米市立の美術館として再スタートを切りました。
久留米市美術館は、地元出身の芸術家たちの作品を中心に、様々な美術作品を収蔵しています。石橋美術館から引き継いだ「石橋コレクション」には、青木繁、坂本繁二郎、古賀春江などの久留米ゆかりの作家の作品が含まれており、その豊富なコレクションは全国的にも高く評価されています。また、石橋財団から寄託された作品もあり、久留米市に深い関わりを持つ作品を中心に展示しています。
久留米市美術館では、常設展の他に様々な特別展や企画展が開催されています。地元に関連する芸術家の特集展や、日本近代洋画をテーマにした展示、さらには現代アートの展覧会など、多岐にわたる企画が行われており、訪れるたびに新しい発見があります。これらの展示を通じて、久留米市民だけでなく多くの来館者が美術に親しむ機会を提供しています。
久留米市美術館は、最新の美術館設備を備えており、展示環境も整っています。常設展示室のほかに、企画展示室やワークショップルーム、ミュージアムショップなども完備されています。また、子どもから大人まで幅広い層が楽しめる教育プログラムや、アートに親しむためのワークショップも定期的に開催されています。
美術館は、石橋文化センターの敷地内に位置しており、周囲は緑豊かな公園となっています。散策路や広場、カフェなどもあり、美術鑑賞とともに自然を楽しむことができます。交通アクセスも良好で、最寄りの西鉄天神大牟田線「西鉄久留米駅」から徒歩約20分(1.6km)、またはバスを利用して「文化センター前」バス停で下車することができます。車での来館も可能で、九州自動車道「久留米インターチェンジ」から約3kmの距離に位置しています。
久留米市美術館は、地域の芸術文化の発展に寄与することを使命として、今後もさまざまな美術展やイベントを通じて、多くの人々に美術の魅力を伝えていく予定です。また、地元ゆかりの作家だけでなく、国内外の優れた美術作品を紹介し、幅広い層に美術の魅力を届けることを目指しています。地域社会と連携しながら、新たな芸術文化の発信拠点として、その役割を果たしていくことでしょう。
久留米市美術館は、長い歴史を持つ「石橋美術館」の伝統を受け継ぎながら、地域文化の振興に大きく貢献しています。多彩なコレクションと魅力的な展示内容、そして充実した施設を有するこの美術館は、訪れる人々に多くの感動と学びを提供しています。今後も、久留米市美術館は地域と共に歩み、芸術文化の発展に尽力していくことでしょう。