平川家住宅は、福岡県うきは市に位置する歴史的な民家であり、国の重要文化財に指定されています。この住宅は、江戸時代に建設された「くど造り」と呼ばれる独特の建築様式を持ち、筑後川流域から佐賀県にかけて広がる民家の形態として知られています。現存する平川家住宅は、その大規模さと建築技術において非常に貴重なものとされています。
平川家住宅は「くど造り」という形式で建設されています。「くど」とはかまどのことを指し、正面から見た際にその形状がかまどのように見えることから、この名称が付けられました。この建築様式は、特に福岡県の筑後川流域や佐賀県にかけて見られるもので、平川家住宅はその代表例の一つです。
平川家住宅を正面から見ると、寄棟造りの建物が三棟並んでいるように見えます。左側に納屋、中央に土間、右側に床上部が配置され、全体としては「納屋」と「主屋」の二棟から成り立っています。上から見ると、建物はコの字型に配置されており、これが「くど造り」と呼ばれる特徴的な構造です。また、屋根の間には瓦製の雨樋が設置され、雨水が効率的に家屋前方に排出される仕組みになっています。
平川家住宅の建設時期は資料によって異なり、江戸時代中期から後期にかけてのものとされています。初期の建物は現在よりも小規模で、居室部分である「ざしき」や「なんど」は後に増築されたものです。特に「ざしき」の仏壇には、文政3年(1820年)の墨書が残されており、これが増築の時期を示す重要な手がかりとなっています。
納屋は明治時代に建設されたもので、主屋と並んで寄棟造り、茅葺きの屋根が特徴的です。屋根の下端である軒の高さは、納屋を含め全ての建物で統一されており、外観に一貫した美しさが保たれています。現在でも、平川家住宅は個人の住居として使用されていますが、見学が可能です。
平川家住宅は、特にその「くど造り」の大規模さで知られています。屋根がコの字型に配置され、左右に突出部があるという構造は、筑後川流域と佐賀県の農家に見られる伝統的な様式です。また、納屋を含めて三つの棟が正面に並ぶ外観は、福岡県南部の地方色を豊かに反映しています。
主屋は一階建てで、寄棟造り、茅葺き屋根を備えています。内部は大きく二つのエリアに分かれており、右側が居室部分、左側が土間部分となります。居室部分には「ごぜん」「だいどころ」という部屋が並び、その後ろに「ざしき」「なかなんど」「かわなんど」の三室が配置されています。土間部分には「うちにわ」と「おくにわ」があり、伝統的なかまどである「芋がま」や「大くど」がそのまま残されています。
平川家住宅が位置する新川田篭集落は、隈上川に面した谷沿いに茅葺きの民家が並ぶ美しい景観が特徴です。この集落は、2012年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、地域の歴史や文化を今に伝える貴重な場所となっています。平川家住宅自体も、福岡県南部の民家の典型として高い評価を受けており、その規模や保存状態から、地域の伝統的建築様式を学ぶ上で重要な資料とされています。
主屋:
正面14.9m、側面10.0m、コの字形寄棟造り、茅葺き、妻入り。建築的には、桁行14.9m×梁間6.0mの主体部分に2つの突出部を設けた形になります。
納屋:
桁行5.9m、梁間3.9m、寄棟造り、妻入り、茅葺き屋根。
現在でも平川家住宅は住居として利用されているため、見学する際には注意が必要です。外観の見学は自由ですが、見学希望者は事前に電話予約を行うことが推奨されています。また、早朝や日没後の訪問は控えるようにしましょう。歴史的な価値を持つ建物であり、適切なマナーを守りながら見学を楽しんでください。
所在地:
〒839-1414 福岡県うきは市浮羽町田篭388-1
アクセス:
平川家住宅は、歴史的価値が高いだけでなく、その美しい景観や独特の建築様式を楽しむことができる観光地です。訪れる際には、古き良き日本の民家文化に触れながら、ゆっくりとその魅力を堪能してください。また、見学の際には事前の予約と、地域の住民や文化への配慮を忘れずにお願いします。