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本吉山 清水寺

(もとよしざん きよみずでら)

福岡県みやま市瀬高町本吉に位置する清水寺は、天台宗に属する寺院です。山号は本吉山、院号は普門院とされており、本尊は千手観音です。また、九州西国霊場第十六番筑後三十三観音28番札所として、多くの参拝者が訪れる霊場です。

概要

清水寺は、その歴史と宗教的な役割に加えて、美しい自然環境の中に佇む寺院としても知られています。この寺院は、平安時代からの長い歴史を持ち、地域の文化や信仰を支える重要な存在です。

桓武天皇の命により、当時38歳の最澄が唐で天台学を学び、帰国後の大同元年(806年)にこの寺院を創建したと伝えられています。最澄が自ら彫刻したとされる千手観音が本尊として安置されており、古来より安産、子授け、縁結びのご利益があるとされています。

歴史

創建の起源

清水寺の歴史は、平安時代初期の806年(大同元年)に遡ります。寺伝によると、最澄(伝教大師)が唐から帰国して間もない頃、1羽の雉(きじ)の導きによってこの山に入ると、合歓(ねむ)の霊木を発見したとされています。最澄はこの霊木を用いて、2体の千手観音像を刻み、そのうちの1体を京都の清水寺に、もう1体をこの地に安置するための堂を建立したことが、清水寺の起源とされています。

柳川藩との関わり

江戸時代には、清水寺は柳川藩の保護を受けていました。「田中筑後守殿家人数並知行付帳」という記録によると、柳川藩藩主田中忠政の時代には「五拾四石弐斗 清水寺」として寺領が記載されています。また、1681年の「延宝九酉年知行取無足扶持方共」にも「五拾四石弐斗 清水寺」とあり、藩内で重要な寺院としての位置付けが確認されています。

立花貞則による再建

1745年(延享2年)、当時の柳川藩藩主立花貞則が願主となり、山門(後述)を建立しました。さらに1836年(天保7年)には、三重塔が落成し、現在も福岡県指定有形文化財として重要な文化財となっています。

「よがんのん、あさがんのん」

毎年8月9日から10日の朝にかけて行われる本尊開帳の大祭「よがんのん、あさがんのん」では、大護摩祈祷が行われます。この日に参拝すると、四万六千日分の功徳が得られるといわれ、多くの参拝者が訪れます。

伽藍

清水寺の伽藍は、歴史的価値が高く、福岡県の重要文化財として指定されているものが多く含まれます。ここでは、主な伽藍の特徴を紹介します。

山門

清水寺の山門は、延享2年(1745年)に柳川藩藩主立花貞則の命により、京都の大工・高田蕃蒸(ばんしょう)によって建立されました。木造入母屋二層の構造で、階上階下ともに36.3㎡、高さ10.8mに及びます。山門は「三門」とも呼ばれ、文殊菩薩、釈迦如来、四天王などが祀られています。建築技術の粋を集めたこの山門は、福岡県の指定有形文化財に登録されています。

仁王門

清水寺の仁王門は、延享3年(1746年)に藩主と藩民の寄進によって建立されました。仁王門には、口を開けた「阿形」の仁王像と、口を結んだ「吽形」の仁王像が安置され、仏法を守護する役割を果たしています。仁王像の高さは約2.4メートルあり、大力を授ける象徴として、草鞋が奉納される風習があります。

三重塔

清水寺の三重塔は、藩内の奉仕により宗吉兵衛が棟梁として、文政5年(1822年)に着工されました。当初は五重塔として計画されましたが、弟子たちによって計画が三重塔に変更され、天保7年(1836年)に完成しました。この三重塔は、清水寺のシンボルとして広く知られ、昭和32年には福岡県指定重要文化財に指定されています。

本堂

本堂には、伝教大師(最澄)作と伝わる千手観音が安置されています。この場所は、参拝者が心を静め、祈りを捧げる神聖な空間であり、古来から安産や縁結びの祈願が行われています。

乳父観音

清水寺には、子供の健全な成長を祈願する「乳父観音」があります。この観音像は、嘉祥元年(848年)に最澄の弟子である慈覚大師(円仁)が彫刻し、供養したと伝えられています。母親たちは乳が出るように祈りを捧げ、祈願成就のお礼に絵馬や千羽鶴を奉納する風習が残っています。

千体仏堂

清水寺の千体仏堂には、柳川藩主田中吉政の家来であった林五郎左衛門の娘、操(みさお)が仇討ちを果たした後、仏像を刻んで供養したとされています。この話は、実録本『南筑操之柳』にもまとめられており、操の信仰と行動が千体仏堂の建立に繋がったとされています。

本坊庭園

清水寺の本坊庭園は、室町時代の作庭様式を今に伝える名園で、その美しさは四季折々に変わります。この庭園は、池を中心に庭石や植栽が配置され、心字池や滝などの自然の要素が巧みに取り入れられています。特に、愛宕山から昇る中秋の名月が心字池に映る風景は圧巻です。

雪舟作とされる庭園

この庭園は、雪舟(1420年~1506年)による作庭と伝えられており、自然と人工の美が調和した傑作です。春には新緑、秋には紅葉が美しく、訪れる人々を魅了します。また、庭園の正面には大きな銀杏の木があり、紅葉の時期には一面が黄色のじゅうたんのようになります。

北原白秋と清水寺

清水寺には、詩人北原白秋の自筆による碑も建てられています。白秋はこの寺院を訪れ、「ちち恋し 母恋してふ 子のきじは 赤と青とも そめられにけり」という詩を残しました。この詩は、清水寺の歴史や自然、そして訪れる人々の感情を表現しており、多くの観光客に愛されています。

交通アクセス

清水寺へのアクセスは、JR九州鹿児島本線瀬高駅からタクシーで約13分です。また、九州自動車道みやま柳川ICからは約3.5kmの距離にあり、マイカーでの訪問も便利です。

周辺の観光スポット

清水寺の周辺には、清水山清水山荘清水山ぼたん園など、自然と歴史を楽しめるスポットが点在しています。さらに、女山史跡森林公園も近くにあり、清水寺を訪れた後に散策を楽しむことができます。

まとめ

清水寺(みやま市)は、歴史的な背景と自然美が融合した寺院です。訪れる人々は、安産祈願や縁結びのご利益を求めると同時に、寺院の美しい伽藍や庭園を楽しむことができます。また、仁王門や三重の塔などの文化財を通じて、当時の建築技術や人々の信仰心に触れることができます。四季折々の自然の中で、歴史と信仰に包まれた静寂の空間を体験することができる、福岡県みやま市の清水寺は、観光客にとって欠かせない名所です。

Information

名称
本吉山 清水寺
(もとよしざん きよみずでら)

柳川・久留米・筑後

福岡県