成田山 久留米分院は、福岡県久留米市にある真言宗智山派の寺院です。千葉県成田市にある成田山新勝寺の直系分院として、通称「久留米成田山」とも呼ばれています。本尊は不動明王で、地域の人々に信仰されています。境内には、象徴的な救世慈母大観音像と平和大仏塔極楽殿があります。
成田山久留米分院は、1958年に成田山新勝寺から分霊を招き設立されました。創建の経緯には、敷地に隣接する浦山古墳の霊を鎮めるという目的もあったとされています。
本堂は、久留米成田山の中心的な建物であり、多くの参拝者が訪れています。成田山新勝寺の不動明王を本尊とし、成田山としての信仰を引き継ぎながら地域の信仰の場としても機能しています。
当寺院の象徴的な建造物として、救世慈母大観音像と平和大仏塔極楽殿が挙げられます。
救世慈母大観音像は、高さ62メートルの巨大な観音像で、その大きさから九州自動車道からもはっきりと確認できるほどです。この観音像は1982年に総工費約20億円をかけて建立されました。観音像は13メートルの赤子を抱いており、表面には18個の3カラットのダイヤモンド、直径10センチの水晶、ヒスイ56個が散りばめられています。観音像の内部には螺旋階段があり、登ることで展望スペースから遠く雲仙岳を望むことも可能です。
観音像の胎内には、螺旋階段を使って肩の部分まで登ることができます。その途中にある展望孔からは、筑後平野、有明海、そして遠くは雲仙岳まで見渡すことができます。また、胎内には天女の舞姿や万人拝仏の像、動物拝仏の像が安置されており、家内繁栄、子孫長久、健康成就などの願いを込めた祈りが捧げられています。特に水子供養や先祖供養のための千体仏が祀られています。この胎内に参拝することで、自分の災厄を取り除き、平和と幸福を祈ることができるとされています。
救世慈母大観音像の額には直径30センチの純金の板があり、その上に18個の3カラットのダイヤモンドが輝いています。また、胸元には直径10センチの水晶(2000カラット)がはめ込まれており、周囲には56個のヒスイが散りばめられています。この豪華な装飾は、観音像の神聖さと荘厳さを一層引き立てています。
救世慈母大観音像の隣には、高さ38メートルの平和大仏塔極楽殿がそびえ立っています。この仏塔はインドの世界遺産であるブッダガヤの大菩提寺と同じスケールで建てられており、同地の石を使用し、約300体の仏像が安置されています。この仏塔は、日本では唯一、世界で2基目となるもので、1997年に建立されました。現在、内部は納骨堂として利用されており、一般の参拝者は入ることができません。
仏塔内には、ミャンマー(旧ビルマ)の国王が礼拝していた仏舎利が納められています。仏舎利は高さ12センチ、直径16センチの象牙に宝石をちりばめた入れ物の中に納められており、1964年の東京オリンピックの際に、ビルマのウ・ケミンダ大僧正から久留米成田山に贈られました。2021年には納骨堂がリニューアルされ、仏舎利と共に先祖の霊を末永く安らかに守るための施設が完成しました。
平和大仏塔の正面には「平和の鐘」が設置されています。この鐘を鳴らすことで、世界中の平和を願うことができます。鐘の上には美しいステンドグラスが飾られ、訪れる人々に感動を与えています。
平和大仏塔の境内には、釈迦牟尼仏を象徴する「仏足」と「金剛法座」が設置されています。仏足は、お釈迦様が悟りを開いた地であるインド共和国ブッダガヤのお釈迦様の足跡を模したもので、踏むことでインド仏跡を巡礼したのと同じ功徳を得るとされています。また、金剛法座はお釈迦様がこの上で座禅を組んで悟りを開いた場所を再現したものです。
久留米成田山のもう一つの人気スポットである「地獄極楽館」では、地獄の様子を模型で再現しています。この施設は、恐怖と教訓を兼ね備えた展示で、訪れる人々に地獄の苦しみを視覚的に伝えます。八大地獄の様子が描かれており、仏教における輪廻や業の教えを深く感じさせる場所となっています。
地獄極楽館の隣には「孝行洞窟」があり、その壁画には中国の孝行者24名の逸話である「二十四考」が描かれています。この洞窟は、親孝行の重要性を伝えるためのものであり、孝行の精神を学ぶ場として訪れる人々に感銘を与えています。
成田山久留米分院の敷地内には、天然宝石造り歴史館というユニークな施設があります。ここでは、源平合戦など日本の歴史上の出来事が、宝石を用いて再現されています。その美しさと芸術性は一見の価値があります。
毎年2月の第1日曜日に開催される節分祭は、久留米成田山の最大のイベントの一つです。この日は、成田山に多くの参拝者が集まり、盛大に豆まきが行われます。節分祭では、約2万袋もの福豆が撒かれ、その中には豪華景品の引換券がランダムに封入されており、参拝者たちを楽しませています。久留米成田山の節分祭は、地域の伝統行事として定着しており、毎年多くの観光客や地元の人々が参加します。
西鉄久留米駅より、西鉄バス八女営業所行きに乗車し「上津町」で下車、そこから徒歩約5分(約0.6km)で到着します。
マイカーで訪れる場合は、九州自動車道広川インターチェンジから約8分(約5.2km)で到着します。寺院には無料駐車場も完備されており、車でのアクセスも便利です。
成田山久留米分院は、久留米市における重要な観光スポットの一つであり、その壮大な建造物や豊かな文化遺産を体験することができます。救世慈母大観音像の荘厳な姿や、地獄極楽館、孝行洞窟などのユニークな施設は、仏教の教えと深く結びついた精神的な体験を提供します。また、毎年の節分祭では、多くの人々が参拝に訪れ、地域の活気と伝統が感じられます。久留米市を訪れる際には、ぜひ成田山久留米分院を訪れて、その魅力を体験してください。