福岡県八女市黒木町黒木にある素盞嗚(すさのお)神社の境内に鎮座する黒木のフジは、日本国内でも有数のフジの巨樹として知られ、1928年(昭和3年)に国の天然記念物に指定されました。特に毎年4月中旬から5月上旬にかけて開催される「八女黒木大藤まつり」では、1メートルを超える長さの花房が多数垂れ下がり、訪れる観光客に圧倒的な美しさを披露します。地元では「黒木大藤」とも呼ばれ、地域の誇りとされる存在です。
黒木のフジは、福岡県南部、八女市黒木町の町並み保存地区の東側、素盞嗚神社の境内前庭に生育しています。このフジの樹は主幹が東南方向へ屈曲し、地上約2メートルの高さで二股に分かれ、それぞれが枝を伸ばして広大な藤棚を構成しています。主幹にはいくつかの支幹もあり、根元付近で複雑に絡み合い、特異な形状を持っています。
枝張りと藤棚の広がり: 黒木のフジの枝張りは、東西48メートル、南北42メートルにも及び、約3,000平方メートルの藤棚が設置されています。そのため、開花時には、藤棚の下を通過する国道442号線の上までフジの花房が垂れ下がり、車でその花の下を走ることも可能です。
花房の長さ: 黒木のフジの花房は非常に長く、最長で1.2メートルに達します。開花期にはその圧倒的な美しさから多くの見学者で賑わいます。
黒木のフジは長い歴史を持ち、地元の伝承によれば、1395年(応永2年)3月に南朝の征西大将軍であった懐良親王によって手植えされたものと伝えられています。樹齢は600年を超えると推定されており、1586年(天正14年)に大友氏の兵火、1821年(文政4年)の火災という二度の焼損を経ながらも、地元の人々の手厚い保護によって現代まで生き延びています。
福岡県八女市黒木町黒木5-2
最寄り駅は九州旅客鉄道(JR九州)鹿児島本線の羽犬塚駅です。羽犬塚駅からは堀川バスに乗車し、八女市内を経由して約50分で「黒木」または「大藤前」停留所に到着します。
九州自動車道八女インターチェンジから車で約30分の距離に位置し、八女インターチェンジから国道442号線経由で黒木町に向かいます。
黒木のフジが位置する八女市黒木町は、歴史ある町並み保存地区として知られ、2009年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。黒木町は江戸時代には筑肥山地の山産物を扱う久留米藩の在郷町として発展し、現在もその歴史的な町並みが整備されて「筑後黒木」として観光客に親しまれています。
八女黒木大藤まつりの開催期間中は、町の各所で観光イベントが行われ、地元の名産品や特産品が販売される露店も並びます。また、素盞嗚神社境内ではフジの見学と共に、地域の文化に触れることもできます。
黒木のフジは、観光シーズンには圧倒的なスケールと美しさで人々を魅了します。枝や幹の力強い形状、藤棚の上に広がる無数の枝とつるが織りなす光景は、他のフジにはない重厚感と歴史の深さを感じさせます。また、町並み保存地区も合わせて散策することで、八女の歴史や文化を深く知ることができます。
春のフジまつり: フジの開花時期には、「八女黒木大藤まつり」が開催されます。美しい藤棚の下での花見はもちろん、地域の伝統や文化を楽しむイベントも行われ、地元の雰囲気を感じられる充実した時間を過ごせます。